インタビュー

男子からの「好き」を集めて自己肯定の材料にしていた。元サークルクラッシャー・鶉まどかの考えていたこと

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毒状態だった母親の変化

――高校まではすごくお母さんとの関係が悪かったんですよね。で、大学に入る時に痩せられて、すごい綺麗になって、お友達もいっぱい出来て、社交的になって、鶉さんは変わったわけじゃないですか。それでお母さんとの関係も変わりました?

 大学一年生の、ほとんど実家に帰らず女友達の家を転々としていた時に、このまま家を出るか、家に戻るか二択だなってずっと考えていたんですけど。ただやっぱり実家は実家で、母と折り合いが合わなかったとはいえ、めっちゃ暴力を振るわれたとか金銭的にタカられるとかそういうのではないので、戻ろうと決めて、二年生から実家に戻ったんです。母は子供時代の私に過度な期待を押し付けていて、私がその期待に応えられなかったことで関係が非常に悪くなっていたわけなんですが、私も冷静に考えて、それこそ「子供としてありのままの自分を全部受け入れてもらう」じゃなくて、母となんとか折り合いがつけられないかなと思って。結論を言うと、今は関係が良好です。

――お互いに折り合いをつけられたということですか?

 はい。家族関係が好転したのには、私が考え方を変えたこと以外にも、2つの理由があるんです。まず、母が承認欲求を子供以外で得たこと。

――というと?

 私と弟が大学進学して、手がかからなくなったということで、母はもともと好きだったフランス語の習得に励むようになったんですよ。母はフランスがすごく好きだったけど、子供が生まれたことで、やりたいと思っていたことをセーブしていたんですね。そのぶんの抑圧が、子供に向かっていたんだと思います。うちの母は「子供がいるから自分はこういうことしちゃいけない」とルールを決めて律儀に守っている人でした。私と弟が大学生になるまで、夜に自分の友達と出掛けるようなことが20年間ほとんど無かったんですね。同窓会とかも全部断って、「家にいなきゃ、お母さんだから」っていう。母の考える“いいお母さん像”にハマるように頑張っていたんだと思います。

――そんなお母さんが、変わった?

 私と弟がもう子供じゃないよっていう年齢になって、母は時間を持て余すようになって。父が「母はフランス語が好きだから、フランス語をやらせてみてはどうか」と考えて、カルチャーセンターのフランス語に行くことを勧めたんですよ。そしたら母はフランス語にのめり込んで、ぐんぐん上達していって。さらに父が、母に一週間のフランス一人旅をプレゼントしたんですよ。

――お父さん、優しいですね。

 それまで感情の乱高下が激しかった母がめきめき回復していって、フランス語教室のお友達と一緒に夜、フレンチを食べに行くとか、そういうことも出来るようになり。おまけに、ちょうど父がフランス出張の機会があって、母に「通訳として来てくれ」って。

――お母さんにとって、すごい自信になりますね。

 そうなんですよ。出張先で、父は「あなたの奥さんのフランス語はすごい!」と褒められたそうです。母は承認欲求が満たされて、今はすごい元気です(笑)。だからやっぱり、「お母さんだからこれをしちゃいけません、あれもしちゃいけません、昼も夜も子供のために生きなさい」って自らに課すのは不健康だったんだと思います。たとえば、夕ご飯のおかずにハンバーグを作ったけど、ひとつが焼き上がりに崩れてしまった。それを食べるのはうちではいつも母でした。父や子供たちには綺麗に焼けたハンバーグを並べて。

――些細なことだけど、献身というか。

 そうです。そういうことが積み重なって、「自分のしたいことが出来ない、子供のために私は自分を犠牲にしてるのに子供は思うように育たない」ってなると、母親は子供と自分の関係の中で、自分を責めるし子供も責める。子供を責めたことで、また自分を責めるっていう負のループ。だけど、家庭外に自分を認めてもらえる場所を見つけられたことで、母はループを抜け出して元気になれたんじゃないかと思います。私が大学に入ってすぐの頃は、私の帰りが夜11時くらいになると、母は心配と怒りと入り混じった形相で、家の前で立って待ってたんですよ! でも今、私は24歳の実家暮らしですけど、仕事とか飲み会とかで終電帰りになっても、母は普通にぐうぐう寝ている。

――もう子供を管理しなくても安心出来るようになったんですね。

 それはすごく良いことだなって思って。家族内のみで関係を限定しちゃうと、「私を認めて!」って承認欲求が他の家族に過剰に向きすぎて、家族みんながツラくなってしまう。たとえば母みたいに専業主婦で自分のための息抜きもしないタイプだと、夫と子供にすごい期待を向けてしまって、危険なのかなって。

――本人がツラいだけでなく、夫と子供にかかる期待=負担も大きすぎますよね。

 いくら自分が完璧な妻・完璧な母であろうとしたって、夫と子供が完璧とは限らないじゃないですか。そこから逃れられて、母はもう今とても生き生きしていて、すごい良かったなって。これ、いい話(笑)。

――後編では、『岡田斗司夫の愛人になった彼女とならなかった私』という本のタイトル通り、愛人体質の女性と、愛人を求める男性たちについてのお話を伺っていきます。

(撮影・取材・構成=下戸山うさこ)

■鶉まどか/ 1990年、東京都生まれの元サークルクラッシャー。現在は都内で働くOL。ブログ『あの子のことも嫌いです』

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