
Photo by Antonio MaloMalverde from Flickr
8月中旬に作成されたこちらのtogetter。この夏に開催されたコミックマーケット88での出来事をまとめられたものです。
【男の乳首】“女装少年”のポスターも「乳首を隠した方が良い」と警察から指導が入ったらしい【コミケ88】
同人誌を販売するブースに貼られた、女装した少年(いわゆる『男の娘』というヤツです)のポスターに対して警察の指導が入り、これまで隠さなくても良かった少年の乳首を今後は隠さないとNGになったらしい……という報告ツイートを発端とした議論が並んでいます。
女装少年の乳首は猥褻物か否か? 非常に興味深い話です。警察の指導が事実だとするならば、この指導はつまるところ「『男の娘』の乳首は猥褻である」と公権力と判定したという証跡になります。これまでは「男の娘は、男なんだからセーフ」としていたものが、「やっぱり猥褻だし、取り締まらなきゃ」と仕切り直されたということでしょう。漫画『スラムダンク』の名台詞を無意味に引用すれば「魚住は今ファウルの境界線を引いたんだ」です。
そもそも女の身体は猥褻なのか?
そこでの「猥褻かどうか」の判定が、女性に見えるかどうかの如何であれば、繰り返し【messy】上で議論されている「マンコは卑猥な存在か」という問題と重なるように思われます。男の乳首は猥褻じゃないが、男の娘の乳首は実質的に女性に見えるから指導せざるをえない、というのであれば、女性の身体は猥褻だ、ということの再定義になってしまう。
もうひとつ興味深いと思うのは、このファウルの境界線の引き直しに戸惑いを覚える人たちの声です。いや、実際、私も「どういうことなんだ……?」と戸惑ったひとりではあるんですが、ここで戸惑ってしまうことはイコール「男性の乳首はOKだが、女性の乳首はNG」という前提で生きていることを示している。警察と違うのは、戸惑いを覚えた私たちが「男の娘は、男だからOKだ」と思っているのに対して、警察は「いや、男の娘は実質的に女だからNGだ」と見なしている部分ぐらい。結局これは、男の乳首そのものの猥褻性うんぬんではなくて、「男の娘」への認識の違いですね。女性の乳首が猥褻であることは自明の大前提としたうえで、話がなされている。
男の乳首はなぜ猥褻でないのか
ともあれ、男の乳首はどうして出してもいいんですかね。結果にコミットするプライベート・ジムのCMを見ても、元プロボクサーや、日本を代表する人気アイドルのメンバーらが「男として」乳首全開で出ていますし、松岡修造が絶叫する世界水泳の中継でも男性選手の乳首は隠されていない。
逆に女性の乳首は、あらゆるところで隠されまくっている。そのように隠されまくっているからこそ、乳首が出たときに騒がれる。大胆な濡れ場、ヘアヌードが披露されると写真週刊誌とその読者たちは、驚くほど隠された乳首に貪欲になるでしょう。水着を着た女性の、乳輪や乳首がハプニングで「見えた/見えない」ことについて、ああでもないこうでもないと議論(?)が交わされるくらいには、女性の乳首が「見える」ことは、男性にとって一大事です。ペニスやヴァギナ以上に、男女の身体で扱いの格差がある部位、それが乳首なのではないでしょうか。
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