
10年経つと犬は転生するそうです。/Photo by Håkan Dahlström from Flickr
前篇でお伝えしたとおり、会場をざっとウオッチングしてみたものの、癒されるどころかどっと疲れてしまったヒーリングビジネスショー。有料コンテンツであれば、もっと癒されるのでしょうか? 幸いにも、この手のイベントはワンコイン程度のお布施……じゃなくて代金で、手軽に体験できるサービスがてんこもりですし。そんなわけで、まずは仕事でお疲れ気味な同行者Kちゃんは〈腸心セラピー〉をチョイス。
Kちゃん「腹を押すだけで、トラウマやらストレスから解放されちゃうんだってよ! 1回500円」
ブースをのぞくと施術台は2台。若い女性と中年女性がひとりずつ担当のようです。けっこう人気があるらしく、整理券を渡されると20分後くらいに来るようにと伝えられました。
待っている間、スマホで腸心セラピーのHPを見てみると、セラピービジネス定番の講座情報を発見。腸の表層部に残るストレス・トラウマを取り除くという謎の技術は、2時間半で身につけることができるそうです。すごい、お手軽。
さらにプロ育成になると、〈腸の奥に眠るトラウマ〉まで解消できる技術へとステップアップするようですが、プロと素人の差ってこの場合どこにあるんでしょう。とにかくスピ界では、子宮にカルマがたまったり、腸にトラウマがたまったりと、セラピーのネタに臓器大活躍です。
さて、いよいよ施術の時間です。靴を脱ぎベッドに仰向けに寝て、おへその位置を聞かれるKちゃん。
セラピスト「では、いくつかの場所を押しますね。あまり大きなトラウマだと解放するのに時間がかかってしまうので、最近感じた小さなストレスを思い浮かべてください」
後からKちゃんはこう語っていました。
Kちゃん「正直今の状況がちょっとストレスかも……なんて言いそうになったけど、電車で隣に座ったおじさんがとても臭かった日のことを思い出してみたわー。担当の中年女性が、わりと威圧感あってさあ」
ちなみに思い浮かべたのはどんなストレスなのか、セラピストには報告しないという流れです。
Kちゃん「そうだよね、そんなのひとりひとり聞いてらんないよね、500円だし」
次に指の腹で下腹部を押されて特に固い部位を指摘され、その中で痛みのある部位はどこだったかと質問されます。「丹田が痛い」というKちゃんに、セラピストはこう話します。
セラピスト「じゃあ、ここを押していきます。痛みが変化してきたら言ってください。痛くなくなるか、人によっては痛みが増すこともあります。あと、悲しかったり、辛い感情が出てきたら、それをしっかりと感じるようにしてください
丹田のあたりを指で力一杯押し、そのままずっと、ただただ押さえ続けているだけのように見えますが……。
腸を押してストレスを解放!?
Kちゃん「べつになんの感情も湧いてこなかった……ていうか、痛い。1分くらい経ってから気づいたんだけど、『痛みが変化した』って言わないと、これ終わらないんだな、と。だから『あんまり痛くなくなってきました』と言ってみたんだよね」
セラピスト「そうですか、ストレスが解放されましたね。もう一度さっきと同じ、ストレスを感じた出来事を思い出してみてください。どうですか?」
Kちゃん「(どうって、何がだろう……)あ、えーと、なんていうか、あんまり気にならなくなりました」
セラピスト「そうですよね! 同じ出来事を思い出しても、以前ほど嫌な気持ちが起きないですよね!」
慌てて「あ、は、はい!」と、完全に〈言わされている〉Kちゃんでした。さらに違う角度から丹田が押されていくので、違うリアクションをしてみたというKちゃん。