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高収入でリスクも少ないって…!? 『ネット風俗嬢』に見る明と暗

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性風俗であるかぎり、リスクはつきもの。/Photo by thephotographymuse from Flickr

性風俗であるかぎり、リスクはつきもの。/Photo by thephotographymuse from Flickr

 米国ドラマ『デスパレードな妻たち』に、郊外の住宅地に暮らす奥さまが家計のために、ライブチャットサイトでセクシー配信する、というエピソードがありました。絵本作家で顔が広く、友人とも家族ぐるみでつき合うなど郊外ならではの濃い人間関係に身をおく彼女が、誰が観ているかわからないライブチャットで自分自身も自宅内部も晒してエロを提供するというのは、私の目には、いわゆる〈風俗〉よりよほどリスキーなものに見えました。

 でも、彼女にとってはきっと「こっちのほうが安全」なのですね。米国での性風俗といえばコールガールでしょうが、こちらは見知らぬ男性と部屋にふたりきりになり、じかに性的接触をします。その過程で起きうるトラブルは、いくつも想定できます。。暴行に性感染症……身体に深刻なダメージを受けることもありえます。アメリカと日本では性風俗にまつわる法律も違えば、それぞれのサービスにおけるシステムも違います。私はそこについての知識を持ちあわせていないのでこれ以上は掘り下げられません。が、ドラマを見たときの私は、性風俗において〈リアルな男性と会う〉と〈ネットで世界中に自分の姿をさらす〉と、どっちがより危険なのだろうと首をひねったのです。

 ということを思い出しながら、『ネット風俗嬢』(中山美里著、リンダパブリッシャーズ)を読みました。ライブチャットサイトを利用した性風俗の全体像に迫るルポルタージュで、1980年代の創始期にまでさかのぼってその変遷をひも解き、どんな女性が働いているか、稼げている女性はどんなタイプか、利用者はどんな男性か、女性たちに何を求めているか、どんな人たちが運営しているのか……などなど、取材に基づき業界全体を網羅した1冊です。

 オビには〈処女でも年収1000万円!〉とあります。なかなかに刺激的な惹句です。処女、ないし男性経験が少ない女性でも、というのはリアルな接触がない〈ネット風俗〉の特異性ゆえですが、そのぶんほかの性風俗よりサービス内容はライト。なのに1000万円稼げるといわれると、下世話な好奇心が刺激されます。「ネット風俗ってそんなに儲かるの? だったら私も……」と考えて手に取る女性も少なからずいるでしょう。

驚くほどの収入! だけど…

 代理店(=女性が通勤し、そこから配信するチャットルーム)を経営する男性の証言によると、「そこらへんの風俗より稼げる」「月100万円は難しくない」「普通にちゃんとやっていれば40~50万円は稼げる」というから、スゴイ世界です。ラクで、場合によっては自宅でもできちゃって、それでもって高収入なんて、夢のような話。でもそれだけに、かえってウマすぎる話のような気がしてきます。

 と思って読み進めると、やはり現実に稼げている女性はごく一部。自己プロデュース力がきわめて高いとか、チャットルームの管理人に素質を見抜かれるとか、何らかのアドバンテージがないと、そこまでの売れっ子にはなれないようです。後者の場合、お店が持っているノウハウをその女性につぎ込み、稼げる素材として育てあげてくれるのです。

 容姿よりも、コミュ力や頭の回転の早さ、場を読む力、自己プロデュース力が求められ、それが天性のものか教えこまれたものなのかはともかく、すべていかんなく発揮されれば売れっ子になり、そのぶん稼げる……というのは、このジャンルに限らずどの性風俗も同じでしょう。ただ、ネット風俗では顔出しをしない女性が多いことや、直接の性的刺激がないぶん、こうした無形の要素が人気をダイレクトに左右するようです。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

@_momoco_

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