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女子が春画を見るべき理由。むずかしいこと考えずエロ娯楽として愉しんで!

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 なんて大らかな性文化だろう、と快哉を叫びたくなりました。若い母親が赤ちゃんを抱き、父親がその子をあやす。でも、そのふたりの下半身はしっかりつながっている。これって、いまのママカルチャーのなかでは大炎上必至ですが、江戸っ子なら「1歳にもならねェ赤子に何がわかるってェんだい! ケツの穴の小せェこといいなさんな」というでしょう(適当な江戸っ子言葉でスミマセン)。住文化の影響もあるのでしょうが、のぞいたりのぞかれたりは日常茶飯事。笑いながら抱き合っている男女の絵も多く、セックスとはめくるめくもの、ロマンチックでなければいけないもの、というハードルの高いもののではなく、日常のひとコマだったのだろうと想像がつきました。「あー、私だったらこういうセックスしたいな」「この場面みたいに彼と抱きあいたいな」と思いながら見ると、江戸の男女がぐっと身近に感じられます。

なんでもアリな春画の世界

 フェティッシュな視点で見るのもいいでしょう。BLあり、百合あり、触手モノあり……と性嗜好のデパート状態な春画の世界。私は以前から〈美女がエグい坊さんとかジジイとかに犯されている〉という春画が好きです。今回、その手の作品は少なめでしたが、1点ものすごい構図で描かれたものがあって「これはヌケる!」と心のなかでガッツポーズいたしました。絵自体のインパクトもさることながら、裏に広がるストーリーが果てしないのです。

 また、これまで〈触手〉はどうも苦手だった私が、葛飾北斎の『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』でその魅力に開眼しそうなのです。美女に大ダコ小ダコが1匹ずつ足を這わせ、吸い付いているという、あまりに有名な版画作品。まずその美女の悩ましげな表情と、アゴの角度にエロスを感じ、そうして見入るほどに、触手という表現もどんどんなまめかしく迫ってくる……。いつしか興奮している自分に気づくのに、時間はかかりませんでした。新しい性嗜好の扉、開いちゃいましたよ。

 文化的価値のあるものをそんなふうに見るなんて、けしからん! という人がいたらナンセンスにもほどがあります。江戸の人たちだって、そうやって愉しんでいたのはまちがいないし、それ自体が文化なんですから。

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歌川国芳《華古与見》 国際日本文化研究センター蔵

 1点1点をハッピーな気持ちで鑑賞し、「あー、セックスしたいなぁ」と思いながら会場をあとにしました。大らかな気持ちで、好きな人と笑いながら抱きあいたい。そんな多幸感あふれるセックスをしたくてたまらなくなったのです。それもこれも春画をとおして、かつての日本が性というものを絶対的に肯定していたことが伝わってきたからです。そして、性を表現することもまた尊重されていました。だからこそ当代きっての名のある絵師たちがこぞって描いたわけですが、作る側も見る側も認められているって、なんて気持ちいい! そんなストレスフリーな性の発露を、セックスで、あるいは女性という性で窮屈な思いをしたことのある女性にこそ見てほしいのです。

 最後にバイブコレクター的見どころを。江戸時代にもラブグッズがあるんですよ。〈張り型〉といって、いまでいうディルドのようなのですが、それを販売するショップもあったんです。女子が連れ立ってその店を訪れ、ウキウキしながらお気に入りの1本を探す作品。女性同士のセックスで、いままさに片方の女性がもう片方の女性に張り型を挿れようとしている作品。そして、ペニスリングなど、バラエティ豊かなペニス周りのグッズを描いたカタログのような作品! 展示を見にいかれる方は、ぜひこの3点をチェックしてください。

(桃子)

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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