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「フェミは/オタクは」全部ダメ、と決め付けない冷静さを~ジェンダー系炎上ファイル(後編)

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(c)柴田英里

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【前編】ジェンダー系炎上ファイル~人工知能からルミネまで

 2015年5月には、コップのフチに載せられる非実在のOLキャラクターフィギア「コップのフチ子さん」のパロディーであり、非実在の女児キャラクターがオナニーをしているようにも見えるフィギア「コップのカドでグリ美ちゃん」がヴィレッジヴァンガードなどでカプセルトイとして販売されていることが話題になり、messyでも「コップのカドでグリ美ちゃん」が販売されることの是非、ゾーニングのされ方への問題への賛否の記事が上がりました。

(参考)
■「コップのカドでグリ美ちゃん」、性的に消費される女児の憂鬱
■コップのカドでグリ美ちゃん問題に見る“ふざけた場所”への弾圧

 実在しない女児とはいえ、コップのカドを使ってオナニーしているようにも見えるフィギアですから、「ゾーニングなく販売するのは如何なものか」という批判が出るのは当然です。西松屋やトイザらスや百貨店の玩具売り場で販売されていたなら不適切と捉えられて然るべきだと思いますが、私が注目したいのは、「コップのカドでグリ美ちゃん」を主に店舗販売していた(販売していることをインターネット上で発表していた)「ヴィレッジヴァンガード」というショップ自体の変容とあり方の問題です。

 「遊べる本屋さん」としてアングラ・サブカル・アウトローな本や雑貨を販売することで人気を博したヴィレッジヴァンガードですが、近年ではショッピングモールや商業施設のテナントを中心に店舗を増やしました。一昔前のように、「ヴィレッジヴァンガード」=「不謹慎なものを扱う店」というゾーニングが成り立っていれば、「コップのカドでグリ美ちゃん」をカプセルトイとして販売しいていても問題はなかったでしょうが、ショッピングモールのテナントである店舗など、アングラ・サブカル・アウトローな本や雑貨はほとんど廃し、明るくお洒落な本と雑貨のお店として営業している店も少なくありません。

 つまり、そこには

・テナントとして入る施設の意向、客層や客の意識の変化、ヴィレッジヴァンガードの経営方針の変化などの様々な要因によって、一昔前まで成立していた「ヴィレッジヴァンガード」=「不謹慎なものを扱う店」というゾーニングが成り立たない店舗が多くあること。
・渋谷宇田川店など、「ヴィレッジヴァンガード」=「不謹慎なものを扱う店」というゾーニングが成り立つ店舗も存在すること。
・「ヴィレッジヴァンガード」=「不謹慎なものを扱う店」というゾーニングが成り立つ店舗と成り立たない店舗の見分けが、インターネット上ではできないこと。
・ショッピングモールなどの子供が立ち入る領域では、性的ととらえ得ることができるようなものはゾーニングすべきか否か。

という問題があったのではないかと思います。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」