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身体的特徴を誇張しない着物の美意識と「痛キモノ」〜日本的な「盛り」と平面の装飾文化

【この記事のキーワード】

 着物は元々が極めて平面的かつ絵画的な美意識によって出来ているので(十二単だって、イラレやフォトショでレイヤーを重ねる感覚に近かったかもしれません)、平面の世界に描かれる漫画やアニメの世界との親和性は自ずと高いです。

 また、近年腐女子を中心にファッションに取り入れられている、好きなキャラクターの缶バッチによってトートバッグの表面を埋め尽くす「痛バッグ」のような装飾技法や、ラインストーンなどによる「デコ」や、プリクラや写真加工やメイクによって顔を「盛る」という行為も、非常に日本的な美意識と感覚に裏付けられているように思います。

 トートバッグの表面という平面的な場所に、缶バッチというこれまた平面的な装飾を重ねていくこと。携帯やネイルや小物を、ラインストーンなどによってもともとの形態などありもしないかのように均一に覆ってしまうこと。メイクでも、顔の元々のパーツを立体的に強調するのではなく、つけまつ毛やカラコンでデカ目にして、鼻の立体感や頬の立体感は消すという、極めて平面的な強調を「盛る」と表します。いずれも、もとにある立体を強調することとは違う、むしろもとの立体感を消して平面化するような方法による装飾です。

 着物文化や日本の装飾の美意識には、「もともとの形態なんてどうでも良い、もともとの形態なんて知ったことか!」と聞こえてきそうな、荒々しく破壊的ですらある身体・立体からの逸脱があるように思えてなりません。

 そして、そうした立体的でない、欧米的でない、荒々しくも平面的な日本の装飾文化を、「日本は子供っぽい・欧米より遅れている」と自虐するのではなく、どのようにしてその文化が生まれたのか、どのようにしてその欲望が生まれたのか、を探求することが、日本におけるジェンダー・セクシュアリティスタディーズにおいても重要になるのではないでしょうか。
(柴田英里)

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」