
根っこには、医療不信がある? Photo by Jay Reed from Flickr
先月24日に胆管がんで亡くなった女優の川島なお美さんが、抗がん剤治療を拒否し〈ごしんじょう療法〉なる民間療法の治療院に通っていたことは、皆さまご存じのとおり。その報道を目にして「おまじない? 民間療法? 霊感商法? 邪気を取り除くとか言ってるから、よくわからないけど怪しげ~」なんて感想を持った人も多いと思いますが、ごしんじょう療法とは何かと言えば、〈代替医療〉の部類に入るでしょう。
〈自然派〉な人たちが好むホメオパシーやアーユルヴェーダ(インド医学)、中国医学(中薬療法、鍼灸、指圧、気功)、アロマテラピー、食事療法、健康食品etc.これらも皆、代替医療の仲間です(オルタナティブ医療。ホリスティック医療と呼ばれることも)。代替医療とは、日本補完代替医療学会の定義によると〈現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称〉とされています。かみくだくと、〈通常医療の代わりに用いられる医療のこと。エビデンスは今のところなく、時にスピリチュアルも取り入れた独自の理論で治療が行われる〉とでも言えばいいでしょうか。
しかしエビデンスがない=絶対に効かないというワケでもなく、中医学などは私たちの生活の中であたりまえのように目にすることができます。今回の川島なお美さん訃報に際し、微妙に〈悪者〉という印象になっている代替医療の扱い方を、『「ニセ医学」に騙されないために』(メタモル出版)の著書である内科医・NATROM先生に、ご教示いただきましょう。
そのお説が正しいかどうかは、一般的に「論文があるかどうか」「データをしっかり読め」なんてチェック法をよく聞きますが、自分はちょっと(かなり?)お勉強が苦手なもので、正直読んでもよくわからずハードルが高く……。その代替医療が信頼できるかどうかを見極める、手軽な方法はありますか?
NATROM「ポイントをふたつに絞りましょう。まず第一に〈標準的な医療を否定するところ〉は避けてください。例えば『がんは手術や抗がん剤では治らない』『ワクチンを打つとかえって体に悪い』などと言い、『その代わりに○○療法を受けなさい』と言ってくるようなところです。標準的な医療を受ければ治るはずだった病気が、治らないなんてこともありえます。実際に、死亡者が出た事例もあります。代替医療は標準的な医療の代わりにはなりません。選ぶなら、標準的な医療と共存できるものにしてください」
信頼できるかどうかは見極められる
「第二に、あまりにも高額な代替医療は避けた方が無難です。医療の分野では〈高価な方が質が高い〉とは必ずしも言えません。質が高い医療とは、複数の研究で効果が証明され、多くの国で認められているものです。そういう質の高い医療は保険適応となり、普通の病院で一定の自己負担で受けることができます。一方、代替医療や民間療法は効果が十分に証明されていませんから、保険適応になっておらず、全額自己負担です。あなたがいくらでもお金を使えるならともかく、そうでないなら、高額な代替医療にお金をつぎ込むより、旅行や食事などの別の楽しいことにお金を使うのをお勧めします」
「標準的な医療だけでは不安なら、付け加えて何らかの代替医療、民間療法を行うのは必ずしも悪くはありません。それで不安が少しでも解消すれば、それだけでも役に立ったと言えます。しかし、標準的な医療を止めて代わりに代替医療を行ったり、買いたいものを我慢して代替医療に高額なお金を支払ったりするのは、割に合いません」
ごしんじょう療法のHPを見てみると〈抗がん剤や放射線治療の副作用を除去し、がんの痛みを取り除く「緩和ケア」として〉行われているらしく、料金もさほど高額ではないというウワサ。巷で「怪しい!」と言われているほどのものではないのかも? しかし、実際に緩和ケアに有効かどうかというと、残念ながらそこまで都合よくはいかないよう。