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「ありのまま」は「怠惰」と違う。マニュアルに従い没個性にならないために

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Photo by _overanalyzer from Flickr

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 世間に出回っている何の根拠もない『愛され論』について、これまで数回に渡って注意喚起をしてきましたが、このコラムを読んで少しでも目を覚ました方がいたのなら、私は嬉しいです。

 ヘアメイクもファッションも、女性たちは男性よりも制約が少なく、色とりどりの自由を楽しむ権利が与えられています(逆に男性はスカートを履いたり肌を露出したりメイクをしたりすると奇異な目で見られ、メイクやファッションを楽しむ権利を剥奪されている側面があります)。私たちは個性を存分に表現する権利があり、機会も術も持っているのに、大半の女性が流行を追ったり様々な情報に左右されることで、かえってその選択肢を狭め、自らを制限していることが残念でなりません。特に一番大事な「自分の個性」を見失っていることは、とても気の毒です。

 ヘアメイクは魔法です。あなたは自分の顔、体型、それぞれの長所&短所をうまく見せるこの特別な魔法をうまく使えていますか? さらに外見だけでなく一番大事な内面までもマニュアルを鵜呑みにして、他の女性と全く同じような考え方、行動をしようとしていませんか? 世の中に沢山溢れている『愛され論』にいつの間にかコントロールされ、自分を見失って、「当たり前の行動」も特別な愛されだと勘違いしていませんか?

自分の価値は自分で高めること

 あなたの良さはあなたが一番分かっているはず。イマイチ自分に自信の無いあなたは、あなたの大切な人に聞いてみるといいでしょう。両親でも兄妹でも親友でもいいです。あなたの周りの人は皆あなたの良いところ、あなたらしさを理解し評価しているはずです。

 私の好きな言葉は「みんな違ってみんないい」です。日本人は小さな頃から家庭でも学校でも、「みんなに合わせる」「周りと違うのは恥」だという教えを受けているせいか、「周りに同調しようとする」「とりあえずみんなと同じ平均」的な考えが広く浸透しているように思えます。悲しい話ですが、学生時代の一番天真爛漫な自由な時期に、価値観やファッションが周りと違う(=同調できない)ことでいじめに遭うなんてエピソードも、未だに日本社会に多く存在する恥ずべき問題であると私は思います。

 私の友人の国際結婚カップルも、日本だと肌の色や様々な違いなどで子供がいじめに遭う恐れがあるから、インターナショナルスクールや、相手の国で子育てをするという人が結構います。海外ならいじめが絶対存在しない、なんてことはありませんが……しかし、「周りと違うことはあなたの個性」だと小さな頃から教えられ、評価される社会がそこにはあります。少なくとも、いじめられている側が、親や教師から「あなたがお友達に上手く合わせないから嫌われるのよ」「協調性がない子ですね」なんて“たしなめられる”ことはありません。もちろん海外なら全ての人が……というわけではありませんが、根本的な考え方は「個性はいいこと」なのです。

 話がちょっと逸れましたが、「みんなに合わせるのは良いこと」という考え方が根底にあるから、幼少期からそして大人になっても日本人は周りを気にし、評判の良い情報を真偽も確かめずに信じ、それに自分を合わせようと無意識に行動してしまうのかもしれません……。日本人の協調性やルールに従順なところは海外でとても高く評価されていますが、そういった社会的な部分と、個人として外見や内面をマニュアルに合わせることは全く別です。大人になっても自己を確立できず、他人からどう見られるかばかりを気にしている姿は滑稽です。

 マニュアル通りの平均点を取って、ひとりでも多くの周りの人に好印象を与え、愛されたい? どうでもいい、あなたにプラスにならない人にまで愛される必要も無いし、そんな人たちに愛されなくてもあなたの価値は何も下がりません。また不評や悪口を言う人も相手にしなくていいのです。そうゆう人はどんなことにもマイナスで、批判し文句を言う人たちです。

 そんな周りの人を意識する前に、鏡で自分をよく見てください。そして今一度、自分を見つめ直して欲しい。あなたの個性をしっかり理解し評価してくれる、あなたにプラスになる特別な人に愛される。べつに大勢からモテたり愛されたり求婚されたりしなくても、それだけで十分じゃないでしょうか?

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千野根アディス実弓

フリーランスのメイクアップアーティスト&スタイリスト&トータルビューティープロデューサー。テレビや雑誌、広告、CMなどを手掛け、多くの女優、タレント、モデル、歌手を担当。豊富な人生経験から、独自の恋愛やモテテクニックのアドバイスを繰り出していく。