連載

元ゴミ屋敷の住人が考える「生き延びるためのゴミ屋敷」

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貧困がゴミ屋敷を生み出す

 この連載を始めてから、ちょっとずつ当時の事を思い出すようになりました。あのとき上原がなぜ生ゴミを干していたのか。きっかけは、「ゴミ袋を買うお金が無いから」だった気がします。ゴミ袋はないけど、床に生ゴミの入ったビニール袋を置くのは気がひける……そんなことを考えていたんだと思います。そのうち、生ゴミ以外のゴミが部屋に散乱するようになり……。ゆっくり着実に、立派なゴミ屋敷に成長していたんだな、と思いました。

 上原の知人に行政支援を受けるのを嫌がり、長期間貧困生活をしている人がいます。一度だけその知人宅に行ったことがあるのですが、家は生ゴミ、ペットの猫の糞尿の臭いが混ざり合い、それが部屋中に染み付いていました。さらに過酷だったのは、ベランダに変色した洋服が置いてあったことです。服にカビが生えて、ペットの糞尿がかかっているところまでは確認できたのですが、ヌルヌルしているように見えるソレが何なのかは、ゴミ屋敷を経験した上原でも分かりません。衣類って腐るものなんでしょうか……?

 きっと、上原の知人も小さな理由の積み重ねで、ああいう状況になったのだと思います。知人は、上原と出会った時には、すでに医療が受けられないくらい困窮している状況でした。家族みんな喘息持ちなんだけど、全員が病院に行くお金がない。だから家族を代表して、誰か一人が病院に行き、処方された薬を家族みんなで分けるような生活をしていました。

 ゴミ屋敷はメディアで面白おかしく取り上げられることがあります。変わった人が「これはコレクションだ」と言い張って捨てるのを嫌がるだとか、近所でも有名な迷惑な人が住んでいるとか、片付けられないだらしない人だとか。でも「ゴミ屋敷」が「ゴミ屋敷」に至るのにはそれぞれに違う背景があると思います。

 そして、ただの「ゴミ部屋」と「貧困とゴミ屋敷」も違いがあると思います。その分かりやすい境界線は、生ゴミとペットの糞尿の有無だと上原は思っています。生きるために最低限必要な食糧やライフラインの確保を優先すると、ゴミ袋だとか、ペットのトイレシートだとか、日用品の優先順位が低くなります。ゴミ袋が買えないから生ゴミや普通のゴミが溜まっていく。ペットのトイレシートが買えないから、糞尿が少しずつ部屋に染み付いていく。どうにかしたくても、どうにかするためのお金がない。そのうち、「ゴミ屋敷」が完成する。

 本来なら誰かが気付いて、何らかの解決策を提示してあげるべきだと思います。とはいえ、たくさんのゴミと共に生活してきた人には、「ここまで頑張ってきたのに!!」「ここで諦めたら、今までの努力が水の泡だ!!」「支援を受けるわけにはいかない!!」など、色んな思いが積み重なって、気持ちの整理ができなくなっているのかもしれません。それに「他人を部屋にあげたくない」「ゴミだらけの部屋は恥ずかしい」という気持ちもあって、誰かと繋がるのを躊躇うところもあると思います。

 ゴミとそういった気持ちが積み重なる前に、どうにかするのが理想なのですが、現実はおもしろがって井戸端会議のネタにされるくらい。数年前の上原も含め、ゴミ屋敷の住人たちを、どうにかするのは本当に難しいです(苦笑)。だって、自分でも気付かないうちに境界線を越えているんだもの。

 今の上原は物を溜め込むと、娘ちゃんから激しいバッシングを受けます。だから、娘ちゃんが上原のもとから旅立つまでゴミ屋敷になることは無いはずです。とはいえ、部屋を見せたこともない担当編集から「片付けできないオーラ」を指摘されるのは、流石に危機感を覚えたので、ほんのちょっとだけ片付ける努力をしてみたい、と思います……。

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上原由佳子

1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

@yu756ka