「着回し」への疑問も然ることながら、コーディネートの他アイテムにも首をかしげてしまった。黒ニットとともに紹介されているアイテムはTODSのバック(860,000円)、Editionのコート(210,000円)、ムートントップス(142,000円)など、高額商品ばかりを使ったスタイリングが紹介されている。これらの商品を購入する人は、UNIQLOの黒ニットを着回す必要があるのだろうか。
知花版で感じたこれらの不思議は、もちろん紗栄子版にも山ほど詰まっていた。紗栄子版の“ワンアイテム”はリーバイスのデニム(16,000円)。さすがに「デニムを手に持つ」というスタイリングはないものの、「デニムには昨日と今日、違う“顔”が似合う」とハットとキャップの物撮り、「デニムにはアンティークな雰囲気のイヤリングが似合う」とイヤリングの物撮り、「デニムにはローテクなスニーカーが似合う」とローカットコンバースの物撮り(とはいえ別ページでは、ハイカットコンバースを着用したコーディネートもあり)の【デニムが写っていない着回し】が掲載され、ブライトリングの時計(779,500円)、ロジェヴィヴィエのバッグ(313,000円)、シャッツィ・チェンのブラウス(118,000円)と安定の高額商品だらけ。
紗栄子版の最大の特徴は、デニム×ブラジャーのみを着た4ページと下着類を紹介した2ページ。「着回し」と言われても、下着姿で出歩くわけにはいかない。ランジェリーブランド「ピーチ・ジョン」との広告契約上の都合かと思いきや、オペークやハンキーパンキーの商品も……。そもそもデニムに合わない下着なんて存在するのか?
「7,890円のニットを100通り着回す」「16,000円のリーバイスのデニムを100通り着回す」「ワンコインのムック」というフレーズを全面に出した本は、もっと庶民的な層が手に取るのではないだろうか。早くも知花版のamazonレビューには「庶民にとっては何の参考にもなりません」との声が寄せられている。着回しアイテムと他アイテムの購買層の差異、「着回し」と謳いながらも、帽子や時計など付属品の物撮りページ。果たしてこのムックは、誰に対する何のためのムックなのか……。第三弾、第四弾と続き、その答えが解き明かされる日が来ることを期待したい。
(夏木バリ)
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