さて、バイトも二週間たったくらいから慣れ始めてきました。ちょっと変な日本語もだいぶ使いこなせるようになってきましたし。今回の「47連勤の乗り越え方」についてはたくさんのアドバイスが集まりました。フォームからは長文の、温かい応援のお便りも頂きました。早速読んでいきましょう。
働け派
・不眠不休で働き倒す勢いで世のため人のため命を削ってがんばるんや。
・四の五の言わず、47連チャン勤務で今の立場をへし折ってもらえば。そうすりゃ、少しは使い物になるかも。
もっと働いてる派
・現在進行形で90連勤ぐらいしてますが、1日7時間なら案外いけると思いますよ。大事なのはちゃんと寝ることでしょうか。
・10連勤目です。11月も完全オフは無く、49連勤以上、12月も年末まで休みが無いとすると79連勤くらいになるかもしれません…(仕事+バイト)昼間は学校もあります。
休め派
・辞める前に休みましょう
・そんな状況なら強行手段、「無断欠勤」
・あなたがこの後無断欠勤で辞めてしまうのは目に見えています。しゃかりきに働くのが美徳ではありませんよ。できないことははっきり「できない」と告げるべきです。
アドバイス派
・47連勤をやったという記事を書いて、そのコメント欄に「奥山やるじゃん」みたいなコメントがつくことを想像して頑張るとか。
・私は過去に1カ月休みなしってのがありましたが、とにかく無心でした。
・私だったら「お金の為、お金の為」と言い聞かせなんとか頑張る、でしょうか…。
・根本からストレスと言う概念をあまり持たない様にする
・よく食べてよく寝る
・動物と戯れる
・色々職場に私物持ち込んで、くつろいでるような人、いるじゃないですか。そんな感じで数十日、オフィスに居座ってみればいいのではないでしょうか。
「動物だったら、エヴァ(飼い犬)がいるじゃん」と思い、戯れようとしたところ、がぶっと噛まれました。……まぁ、いつものことです。
にしてもコメント欄見ると、みんな働き過ぎじゃないですか? この日本はそんなに過酷な労働に溢れているんでしょうか。これが当たり前なんだったら、なんだか怖くなりますね……。
でも、「無断欠勤で辞めてしまうのは目に見えています」とか言われると、何が何でも休みたくなくなってきました。「奥山やるじゃんみたいなコメントがつくことを想像して頑張る」ことにします。まあどうせ「やって当たり前だろ」みたいな底意地悪いコメントがつくんでしょうけどね。
さて。
二週間も経つと、各作業に誰が精通していて誰に話を聞けばいいのか、キーマンが誰なのかなど、なんとなくわかってきます。と同時に、仕事が忙しくなってくるにつれ、細かいこと言わずに仕事を任せてくれるようになってきたので、少しずつやりやすくなってきました。仕事中に冗談言う余裕が出来てきたって感じです。
結局仕事って、細かく振られているうちは自由に出来ることなんてほとんどないんです。いちいち指示を仰いだり、判断を委ねたりしなきゃいけない。だから、なるべく大雑把に、パッケージで仕事を振られるレベルにさっさと行きたい。
なんか、バイトの方が責任がないからラクだ、みたいな言い回しってありますけど、あれって嘘ですよね? 権限と責任が自分の手元にある方が疲れないに決まってる。仕事のペースも自分で決められるし、下っ端に比べたら振り回されることなんてどんどん少なくなってくる。
まぁ、数カ月で辞めるつもりではあるのですが。でも、ここで、「どうせ貯金のための一時的なバイトだし、適当に手抜いてペース配分しよう」なんてやってたら、今までの自分と何も変わらない気がするんです。惜しまれながら辞めるくらいになって、自信をつけたい。
奥山さんは10点満点で言うと……ジャカジャン!
以前の会社員時代に比べたら考えられないくらい真面目に仕事に取り組んでいると、その部署のリーダー格の社員に呼ばれました。
リーダー「奥山さんって10点満点で言うと、今で8.5点くらいですね」
それは……高いんだろうか低いんだろうか? 喜ぶべきか反省するべきかリアクションに迷っていたら、リーダーが笑顔になりました。
リーダー「これは中々高い点数ですよぉ!」
その瞬間、自分の心がすーっと冷めていくのがわかりました。
うるせーな。
ああ、デジャブです。過去にも何度もこういうことがありました。
大学一年の頃、初めてやったバイトは塾講師。最初に担当した全教科赤点の高校生を、一カ月指導して100点取らせた僕は時給を上げてもらうことになり、更に塾長から焼肉を奢ってもらうことになりました。その時点で既にブルーでした。他の塾講師も交えたその宴会は深夜まで続き、「これで奥山も俺たちの本当の仲間だ、なっ!?」と言われたあたりで自殺したくなってきました。ところがそれから、「今日は気分がいいから俺の家で朝まで飲もう」と塾長に家まで連れてかれ、本当に嫌になってきました。黒沢清の『アカルイミライ』って映画あるじゃないですか? ちょうどあんな感じです。会話を続けるのがただただ苦痛だったので、塾長の一戸建ての家にあったPS2を起動させて、洋物のクソみたいなボクシングゲームを無言でやり続けました。その間、何度も塾長は「そのゲームそんな面白いか?」「貸してやろうか?」と話しかけてきましたが「いまそれどころじゃないんです」としか言わず、そのクソゲーを朝までやり通しました。そのまま家に帰って、メールで「辞めます」と伝えました。
テレアポのバイトしてたときは、「どうだ、契約とれた祝い金だ、嬉しいだろう?」と言われて金を受け取らずに辞めました。札束で頬をはたかれてるような気がして、気分が悪かった。
会社員時代は結構耐えました。パワハラ上司が営業車の中で自分の息子のビジュアル系バンドのCDをかけだし、感想を求めてきたときも、愛想よく返事をしたし。同期の変なクソデブから、「お前の配属は贔屓だ! 絶対に負けない!」と意味不明過ぎる嫉妬に基づいて嫌がらせを受け続けたときも笑って流した。辞めたのは小説を書くためだったのですが。でも、そういう瞬間瞬間に心が冷めていってたのも確かでした。
僕ってナメられやすいんでしょうね。
どこに行っても、果てなく繰り返される不毛なマウンティング合戦に付き合わされるハメになる。
それとも、こんなことでいちいち冷めてたら、働いていくことなんて出来ないんでしょうか。
うんざり、する。
僕のこの感覚って、なんか、おかしいんでしょうか?
僕が変なのかな……。
先輩に仕事を教え出した無職
「職場に私物を持ち込む」というアドバイスを実践しようとしても、デスクにどんな私物を持ち込んでいいのか、真剣に考えるとよくわからなくなってしまいました。いや、真剣に考えるようなことではないのかもしれません。とりあえず、インスタントコーヒーの瓶とマイカップを持ち込みました。
そのうち、今まで面識のなかった、でも明らかに僕より先輩のバイトの人たちが、何故か僕に仕事を教わりにくるようになりました。僕の態度がデカく、一部の社員に対してやけに馴れ馴れしかったり冗談ばっかり言ってるからでしょうか? そしていつの間にかその人たちの仕事のフォローまですることになり……先輩が書いてきた普通の日本語を、変な日本語に直す役目まで仰せつかることになりました。何故そんな変な日本語を使わなければならないのか、という一応の理屈も、今では僕はすらすらと説明することが可能です。
というわけで、そこそこ職場に打ち解けてはきたのですが。
でもなんか虚しい。やっぱり何か、人を騙してるような気分になります。これは前の会社員のときも全く同じで。
自分が正しいって信じてないことを、さも信じてるように振る舞わなくちゃいけないし、自信なんて全くないのに、自信満々に振る舞わなくちゃいけない。笑いたくないときに笑って、聞きたくない話に相づちを打ち、ムカついててもキレられないときがあるかと思えば、ムカついてなくてもキレなきゃいけないときすらある。
働いてると、自分が何か詐欺師に思えてくるんですよね。
これじゃ元の木阿弥だ。いや、単に年収が死ぬほど下がって夢が叶わなくて歳とって死に近づいただけ、全てにおいて悪化してる……。というか僕はこの先の人生で、25歳のときの年収を越えることがあるんだろうか? ……といっても、当時500万半ばくらいしか貰ってなかったはずですが。
そういや、バイト先や会社など、労働する場所で出会った人に、心を開いたことなんて人生で一度もないや。周りを見てると案外、親しく付き合ったりしてるみたいだけど。僕は職場の人と土日に会ったことなんて一度もありません。上司の誘いを断ったことはそんなにないけど、自分から人を誘ったのは数度、せいぜい必要に駆られて後輩を平日に飲みに連れてったことがあったくらい。ミョンちゃんなんか、よく会社の人を家に呼んで泊まってもらったりゴルフ行ったりしてるみたいだけど。やっぱり何か、僕って働くこと自体にコンプレックスがあるんだろうか。
でも憧れるなぁ。一度でいいから、一緒に働いてる人と飲みに行って忌憚のない意見を語り合ったりしてみたい。
そういや、会社員一年目のあるとき、指導係の先輩がこんなことを僕に言いました。
「1日最低8時間が平日5日、年間240日近くずっと顔合わせてる、家族より一緒にいる時間が長いのに、なんでもかんでも誤魔化し続けられるわけないだろ?」
そう、確かに職場の人って、一時的にしろ、どんなに親しい人よりも長く一緒にいるんだよなぁ……。
どうしたら好きになれるんだろう?
無理だけどね。
無理なのかな。
なれることなら無心になりたい
だんだん鬱になってきました。そうこうしてるうちにいま着手しているプロジェクトが佳境に。みんなが殺伐としてきました。
ダイエットのために、コメント欄にあったサラダチキンを購入し、バイト先近くの公園で食べることにしました。手を汚さないようにパッケージで挟み持ってサラダチキンを口に運びます。冬の公園のベンチで、たった一人で、つめたい鶏肉を食べると、身も心も冷えてきて、地球滅亡後の人類最後の生き残りにでもなったような気分を味わえます。
どうすればモチベーションを保てるのかわからなくなってきました。もうモチベーションがなくても、ある程度の仕事はこなせるようになったのですが、こんな姿勢で生きていきたくないんです。
っていうか……なんで新卒で入った会社辞めたんだっけ? 別に仕事に行き詰まってたわけでもなく、すこぶる順調だった気がする。待遇に不満もなく……仕事もラクで……でも小説を書くために辞めた、のに。
結局小説がうまくいかなくて、また、働き始めて、しかも今はバイトだ。
ああ。そうか。
僕は人生に負けたんだ。
あとは消化試合の人生なんだ……。
だったら死んだほうがマシじゃないか。もうだらしなく生きていても楽しいことも嬉しいことも何もないんだから。
「そんな人生は嫌だな」
僕はそう、口に出して言いました。突然、独り言をつぶやきだした僕を、公園にいた他の人々が不審そうに眺めてきます。死肉みたいなサラダチキンを食べ終えて、僕はふらふらと立ち上がります。
「そんなゾンビみたいなオッサンになってたまるかよ」
助けてくれ。僕は嫌だ。怖いんだ。自分の未来が。暗い将来が。孤独が。
どうしたらいいんだ。
誰か教えてくれよ。
昼休みが終わり、会社に戻ると暖房が効いていました。少し乾燥し過ぎだと思いましたが、インスタントコーヒーを淹れて、無理矢理胃に流し込みます。
アドバイスを思い出します。無心になれ、無心になれ、自分にそう言い聞かせます。
人間、寒いというだけで心が全部駄目になるんだと思いました。だから体を温かくしようと、とりあえず僕はそう思い、それから仕事に集中しました。
現在の身長体重
身長:172cm
体重:69kg(前回から2kg痩せた)
目標体重60kg
現在の連勤
35連勤(残り12)
現在の貯金額
-11万円(親への借金)
目標金額30万円