そう、あれは去年の初夏だったキュウ……映画『桐島、部活やめるってよ』の話題で、Twitterが賑わっていたキュウ。「そんなに話題に上るってことは、面白い映画なのかキュウ?」と気になって、最終日に一人で見に行ったキュウ。
素晴らしい映画だったキュウ。映画部に所属してマニアックな映画が大好きな主人公・前田涼也を演じる神木隆之介くんも、カット割り、構成も、素晴らしい映画だったキュウ。こんな素晴らしい映画の原作はきっと素晴らしく面白いはずだキュウ……と思って原作を手にしたキュウ。
朝井リョウ著「桐島、部活やめるってよ」集英社
わくわくしながらページを開いたキュウ。
……二時間くらいで読み終わったキュウ。なんの盛り上がりも見せ場もなく、だらだらして終わったキュウ。出てくる漢字も簡単だし、読書している感じがあまりしなかったキュウ。この作者バカなのかキュウ? そう思って本の著者近影のところを見たら早大生でダンスサークルに所属ってあって、キメ顔で写真が載っていたキュウ。茶髪でいかにもヤリチン顔だキュウ。
早大生でダンスサークルで作家? イラつくキュウ!! こんなクソつまらない小説で調子こいてるんじゃないキュウ!!
あたし知ってるキュウ。早大のダンスサークルは海で4泊5日の合宿をヤってるんだキュウ。もちろん男女混合キュウ。その合宿では夜な夜な浜辺でダンスバトルをヤるんだってよ、キュウ。オレンジ色のライトで照らされた浜辺、砂浜に響く重低音……。
ム ード満点のダンスバトル後半では、盛り上がった男女が暗闇に消えていくらしいキュウ……一体何のダンスバトルをしてるんだキュウ?
フリーすぎるダンスだキュウ。いくら早大だからってスーパーフリーにもほどがあるキュウ!!
パコりまくりのリア充作家はロメロなんて見ないキュ!
映画『桐島、部活やめるってよ』は、監督と脚本が素晴らしいからあれだけヒットしたんだキュウ! 朝井リョウの小説はただの××だキュウ! 映画のヒットに便乗して人気が出ていく朝井リョウ……許せないキュウ。しかも、次の作品『何者』で直木賞を受賞しやがったキュウ! あー、イライラするキュウ!
平成生まれで、早稲田卒で、サラリーマンと作家の二足のわらじで誰もディスれないキュウ。しかも、直木賞まで取ってますますディスれないキュウ。
このままこの男を野放しにするのは日本の文壇にとってまずいキュウ! いつ叩くの? 今でしょ! キュウ~~!!!
『桐島、部活やめるってよ』の映画では、主人公がスクールカーストの最下層にいるっていうところがサブカル層の支持を得たキュウ。撮りたい映画がロメロのゾンビ映画、っていうカルトっぷりだキュウ。そんな主人公が休日に見に行った映画は『鉄男』。懐かしいキュウ。田口トモロヲが出ていたキュウ。あたしも高校生の頃レンタル屋さんで借りて見たキュウ。友達が誰もいなくてあの頃のあたしは本と映画とマンガ漬けだったキュウ。こじらせ女子なんて言葉はまだなかったけど、あたしもかなりこじらせていたキュウ……。
つい、昔の思い出に浸ってしまったキュウ! そんなことより、朝井リョウだキュウ!! あんなリア充なやつがロメロのゾンビ映画なんて見るわけがないキュウ! 鉄男なんて知らないキュウ! ダンスして女とパコっているような男が見る映画じゃないキュウ! 見ていたら女がドン引きして寄ってこないキュウ。当たり障りのないアメリカのヒット映画を見るか、気取っているおフランス映画を見て陶酔するタイプだキュウ。「しQちゃん、それはさすがに偏見だよ~。知らなかったら作品に登場しないよ~」って卵巣から聞こえたけど、原作にはロメロも鉄男も出てこないキュウ! 朝井リョウはサブカル作家じゃなくて、リア充作家なんだキューーーーッ!!
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