
あなたにとって憧れ?それとも恐怖?叶姉妹の魅力は底知れない。
短期集中連載・叶姉妹を読む!01
1990年代後半から「芸能人」としてメディアに登場し、ゴージャスなセレブキャラでお馴染みになった叶姉妹。姉の恭子さん、妹の美香さん(そして次女の晴栄さん、というのもいた)は、年齢不詳、仕事も不詳(バラエティ番組やイベント出演といった芸能仕事だけでセレブライフを維持できるわけがない、と見られている)、日本人離れしたスタイルと宝くじが当選しても手が届かないほどの高価な宝石の数々……とにかく「謎」の姉妹だ。
ゆえに、「石油王の愛人」「高級売春婦として稼いでいる」などとウワサされ、顔も体も人工的だと散々叩かれてきたが、最近ではもはや「それをツッコむのは野暮でしょ」という空気が出来上がりつつある。芸能人なんて、多かれ少なかれ庶民的ではない生活をしているし、テレビで見せる顔は虚像だ。しかし、いわく
・本当にセレブならば、バラエティ番組に出演して微々たるギャラを稼ぐ必要などないはず
・本当にセレブならば、ヌード写真集を出版する必要などないはず
・本当にセレブならば、「歌がうまい王座決定戦」に出場する必要などないはず
・本当にセレブならば、パチンコ屋のイベントに出演して小金を稼ぐ必要などないはず
「アンチ叶姉妹」は、こういった批判を繰り返し、彼女たちが公開している豪華な衣装や宝飾品はレンタルだとか、はべらせているメンズたちは経費で雇っているだけだと推測している。しかし仮に彼女たちが仕事用のキャラクターだという理由のみで、あそこまで徹底して自由奔放なセレブキャラを演じているとしたら、よほど賢く理性的、かつ本来の自分を抑えることのできるものすごい人物だと言えるだろう。小倉優子だって「こりん星から来たゆうこりんだぷー」というキャラを演じ続けることはできなかった。
叶姉妹のすごいところは、カメラの回っていない舞台裏でも、決してそのキャラを崩さないところである。長きにわたり、周囲をも巻き込んでセレブキャラを維持しているうえ、次女の宝石持ち逃げ事件・実父の暴行事件などがあっても、本人たちは「この機にキャラチェンジを」などと目論むことはなく、それまでとまったく変わらぬ姿勢を貫いている。
ここ数年、芸能人はブログやTwitterを通じて私生活を見せることも多くなってきた。叶姉妹もアメブロ上に公式ブログ「ABUNAI SISTERS」を開設した2009年当初は、一カ月に100~200本以上もの記事を更新し、ファンとの交流もはかっていた。それなのに更新は翌年から一気に減り、今年上半期はひと月平均9本。内容も、その月に誕生日を迎えることをコメント欄で申告したファンへの「ハッピーバースデー」コメントと、出演番組告知ばかりだ。これでは彼女たちの日常をうかがい知ることはまったくできない。そこで、叶姉妹がこれまでにリリースしてきた著書や写真集といった作品から、「叶姉妹」というタレントを読み解いていきたいと思う。
叶恭子という人生
まずは2000年(ミレニアム、懐かしい)に発行された恭子さんの自叙伝と言うべき一冊。第5章~7章にかけて、年老いた石油王との見合い相手として選ばれた経緯がつづられているが、彼女自身が「これはまさに映画の世界だ、と思いました。映画のシナリオにしても、ちょっとできすぎていて、むしろ陳腐という感じがするほどです」と述懐するほど、その部分は幻想的なストーリーになっている。
ここに登場する彼女の家族は、「輸入会社」を経営する父親と、あまり家事をしない母親、妹の晴栄さん。父はよそに家庭をいくつも持っているプレイボーイで、あちこちで妾を囲って子供ももうけている。戸籍上では、7人の子供を認知しているが、他にももっといるのではないかと親戚たちは話しているという。美香さんもそのうちの一人で、いわゆる異母姉妹だと記されている。