みなさまこんにちは、『トゥルー・ウーマン・ショー 〜欲望と所有にまつわるエトセトラ〜』を連載している柴田英里です。
今日は、私が現在企画しているイベントと、そのイベントを映像・記録誌として残すためのクラウドファンディングキャンペーンについて紹介させて頂きたいと思います。
来年(2016年)の2月19・20・21・27・28日の5日間、『マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー』という全5回からなる連続トークイベントを開催する予定です。『マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー』とは、アートの中で女性を含む様々なマイノリティーはどのように位置づけられてきたかということを踏まえ、そこにある差別や問題をどのように解決するか、また、その領域にはどのような可能性があるかを毎回2人のゲストを迎えてトークしていくイベントです。会場は東京都新宿区の「新宿眼科画廊」の地下イベントスペースです。
日本のアートシーンには、女性を含む様々なマイノリティーへの差別問題があります。ろくでなし子さん逮捕騒動におけるミソジニー(女性憎悪)や、つい最近話題となった東京藝術大美術学部教授の生徒へのセクハラなどをはじめとする各種ハラスメント。LGBTをはじめとしたセクシュアルマイノリティの表現とその背景、そして、マジョリティではない表現者や表現が、「主流ではないもの」や「趣味」と不当に判断され、歴史化されにくい問題などです。ですが現状、こうした問題が語られる場は美術大学を含めほとんどなく、本などにまとめられる機会もあまりありません。
そこで、今回、これらの問題をクリティカルに紐解いていく、『マイノリティ・アートポリティクス・アカデミー』(略して「MAPA」)というイベントを企画しました。
タイトルは、美大や芸大ではなかなか取り上げられにくい、学生がアクセスしにくい分野を取り扱ったイベントであることから、メイン(大学や高校の授業)に対する塾やサテライト講座のような意味を込めて、『マイノリティ・アートポリティクス・アカデミー』という名前にしました。
ただ、イベントの開催地域・場所・日時が限定されてしまうため、遠方の方や日程が合わない方など、会場に足を運べない方も少なくないでしょう。そうした方にもこのイベントの内容を伝えたい。また、イベントをその場限りで終わらせてしまうのではなく、今後とも継続的に取り組んでいきたい、問題をより多くの人とシェアしたいという思いから、このイベント、『マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー』を映像・記録誌として残したいと考え、その際にかかる諸費用の一部を、クラウドファウンディングを利用して募集することになりました。
http://camp-fire.jp/projects/view/3955
皆様のご期待に添うべく、精一杯努力してまいりますので、なにとぞご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
つづいて、MAPAがどのようなイベントであるのか、各回のテーマ・概要・ゲスト概要をご紹介致します。
【第1回】2月19日/テーマ「ジェンダーから見る美術史 —美術史の中で女性はどのように扱われてきたか」
ゲスト 山崎明子(視覚文化論・美術史/奈良女子大学准教授)、ろくでなし子(アーティスト・まんが家)
美術史の中で、女性はどのように描かれ、また、女性作家はどのような作品を作り、扱いを受けてきたのでしょうか。描かれる女性、描く女性の歴史から、美術史の中で女性がどのように扱われてきたかを読み解きます。
また、それによって、ろくでなし子さんが2度逮捕された意味を、『近代日本の手芸とジェンダー』の著者で美術史家の山崎明子さんとろくでなし子さんをゲストに迎えて、鼎談形式の講義を行います。
【第2回】2月20日/テーマ「セクシュアリティと暴力 —セクシャルマイノリティの表現史」
ゲスト 千葉雅也(表象文化論・哲学/立命館大学准教授)、土屋誠一(美術批評・沖縄県立芸術大学准教授)
日本では、ダムタイプをはじめ優れたクィアアートの作家がいたにも関わらず、クィアアート・ジェンダーアートなどはまだまだ歴史化されていない上、海外のクィアスタディーズが絡むアートも、「クィア」の部分の言及がさけられたまま紹介されることも少なくありません。
この回では、日本のクィア表現の歴史や差別の問題を、昨年の愛知県立美術館での鷹野隆大の作品撤去警告や写真家レスリー・キーの逮捕事件も踏まえながら、クィア表現の新たな可能性について、哲学者の千葉雅也さんと、美術批評家の土屋誠一さんをゲストに迎えて、鼎談形式の講義を行います。
【第3回】2月21日/テーマ「セクハラ・パワハラ・アカハラ・テクハラ —表現者が知っておきたいハラスメントの対処法」
ゲスト 小谷真理(文芸批評家/明治大学客員教授)、深澤純子(NPO法人ヒューマンサービスセンター局長)
表現の分野、とりわけ芸術の領域では、「表現の自由」という言葉に隠れて、アカハラやセクハラが未だに数多く横行しています。つい最近も、東京藝大美術学部教授の生徒へのセクハラが話題になりましたが、狭いコミュニティゆえに明るみになることは少ないという問題があります。
このような問題を重く捉え、若手表現者がハラスメントに遭遇した時の具体的な対処法や、被害を未遂に防ぐ対策など、自らも「テクスチャルハラスメント」の被害を受け、裁判で勝訴し、『テクスチャルハラスメント』という著書もある文芸批評家の小谷真理さんと、ハラスメントや労働問題の相談を長年請け負ってきた、NPO法人ヒューマンサービスセンター局長の深澤純子さんをゲストに迎えて、鼎談形式の講義を行います。
【第4回】2月27日/テーマ「超!視覚文化塾 —現代の視覚文化を読み解くためのセオリー」
ゲスト 石岡良治(表象文化論)、星野太(美学・哲学/東京大学特任助教)
絵画や彫刻、ドラマやアニメに広告、現代は様々な視覚文化に囲まれた、視覚過剰時代とも言えますが、それらの図像や映像表現の意図や意義を読み解くための技法を、いくつか例を出しながら紹介していきます。
「図像を読む楽しさ」「表象を読み解く楽しさ」を、『視覚文化「超」講義』の著者石岡良治さんと、美学者の星野太さんをゲストに迎えて、鼎談形式の講義を行います。
【第5回】2月28日/テーマ「“女の子カルチャー”、或は、“主流ではないとされるもの”の正しい保存と伝承」
ゲスト きゅんくん(ロボティクスクリエイター)、ni_ka(詩人・アーティスト)
女性が制作した作品や、女性のニーズに答えた商品は、「女の子文化」「女子向け」と十把一絡げにされ、男性の作品、男性向けの商品よりも内容が薄く、価値が低いとされたり、フラジャイルさや可憐さや母性といったイデオロギーが勝手につけくわえられてしまうことなど、多くの問題を抱えています。
また、「女の子文化」「女子向け」とされることで蔑ろにされてしまう作品のコンセプトや、男性目線によって曲解された「女の子文化」が主流として語られることで、文化の中心にある核が封印されてしまわないために、ロボティクスクリエイターのきゅんくんさんと、ARを使った詩や、地下アイドルグループ・仮面女子とコラボレートしたアート作品を制作する詩人でアーティストのni_kaさんをゲストに迎えて、鼎談形式の講義を行います。
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【MAPA】
◎マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー・アーカイヴプロジェクト
MAPAの成功と映像・記録集作成のために精一杯頑張りますので、
このイベントに賛同いただけましたら応援頂けますと幸いです。
皆様のご支援や情報のシェア・拡散、心からお待ち申し上げます!!!!