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日常的に暴力のある環境からシングルマザーが抜け出すためのパスポート

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 大学の喫煙所で聞こえてくる会話は「高校の頃、タバコ吸ってるのが先生にバレて部活動停止になったってば!(笑)」と、可愛らしい話ばかりで、キャンパス内って何かの保護区域だっけ? と思ってしまうほど平和な日々を過ごしています。シングルマザー女子大生・上原由佳子です。

 普段ぐうたらと過ごしている上原ですが、22歳から26歳まで通っていた高校生活4年間のうち3年間は、シングルマザーの当事者団体で、中卒・高校中退シングルマザーが高校卒業資格を取れるような制度を作るために活動してきました。その活動は、認可保育園保育料のみなし適応を訴えるのがメインだったので、高卒資格のための制度に関しては上原が無駄に熱かった気もしますが……(笑)。

 今年度4月から始まった「高等学校卒業程度認定試験(旧大検)支援事業費補助金(以下、補助金)」は、高校卒業程度認定試験(以下、高認)合格のために塾や通信教育を受けた場合、修了時に受講費用の2割が支給され、また高認試験に合格した場合は受講費用の4割が支給される、という制度です。合計2回、最大6割(上限15万円)が支給されるわけですから、家計が苦しい状況にある人にとってはとてもありがたい制度となっています。

 上原は、塾や通信教育以外に通信制高校・定時制高校が補助金の対象になることを望んでいました。塾や通信教育の場合、いくら頑張っても受からなければ高卒資格になりません。それに長期間勉強してこなかったシングルマザーが子育てしながら自力で高認試験の勉強するのは、かなり厳しいんです。ぶっちゃけると、なんとか高校を卒業して大学に通っている上原は、生物とか化学とか理系科目に関しては高認レベルもできません(笑)。高卒認定をとるために、全科目高認対策をしなくちゃいけないなんてゾッとします♡

 でも、今までは親向けの学習支援制度みたいなものは、高等技能訓練促進支援金しかなかったので高卒資格取得を対象とした補助金ができただけでも良くなったなあ~と思っています。

学歴だけが進学の理由じゃない

 いつ振り返っても、あの頃はアクティブだったなあと思います。同時に「何で高校卒業資格に熱くなれたんだろ?」という疑問をずっと抱いていました。というわけで今回原稿を書くにあたり「高校卒業資格やその補助金と上原の関係」について珍しく真面目に考えてみたところ、「学歴が環境を変えるパスポートになる」ことに気がつきました。

 先日、沖縄県内紙に掲載されている貧困をテーマにした連載で、親子3代で若年シングルマザーという話が紹介されていましたが、そこでも「高卒資格が欲しいけど~」という声があがっていました。

 おそらく読者の皆さんも、中卒・高校中退のシングルマザーが「高認試験の勉強をしている」「高卒資格が欲しいけど勉強するための金銭的・時間的な余裕がない」と話しているのを、テレビや新聞でちょいちょい見かけたことがあると思います。

 上原が大学進学を決意した理由の一つは、以前も書いたように、高卒と大卒では、生涯年収がまったく違ったためです。大卒じゃなくても、中卒だって幸せに生きることはできると思います。でも当時中卒だった上原は、中卒のままで娘ちゃんを育て続けられるほど安定して収入を得られるとは思えませんでした。それに、いつまでも家族から支援を受けられるかもわからない。学歴と就労所得の話を一緒にすると、「社会に出たら学歴なんて関係ないよ」と反論されるのですが、少なくとも中卒と大卒だったら全然違うと上原は思います。

 たしかに学歴だけが収入を決めるわけではないでしょう。今は高学歴プア、ワーキングプア、非正規雇用の問題が取り上げられています。「非正規雇用の問題も大変ですよね」「今は大卒でも仕事ないですよね~(汗)」とか、上原自身もよく言います。でも、内心は「就労と環境は切り離して考えないといけない問題だろ」と思ってしまいます。そしてこれがなかなか人に伝わらないんです。

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上原由佳子

1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

@yu756ka