さて、前回の休みの日に何をしたらいいですか? という質問……なんか、燃えましたねー! というわけで今週も、早速頂いたアドバイスを読んでいきましょう。
〇アドバイス
・ただぼーっとしていたっていい
・部屋の掃除
・蟻の巣の破壊(or水没)
・誰かを愛したら変わる
・骨髄バンクにドナー登録
・休日は散策でもすればいいかと
・暇つぶしに資格の勉強しなよ
・休まなくていですよ。別のバイトをしましょう!
・ロッククライミング・登山・サイクリング・キャンプ
・家事手伝いか在宅ワーク
・変な資格を取ってみるとか
・ちなみに私は今週末は阪神競馬場へ行って関西蚤の市で色んなお店を見て回ろうと思っています。何かを買いに行くとか食べに行くとか、花の手入れをするとか、楽しいことはいっぱいありますよ
〇怒りの声
・死ね
・ふざけるな‼
・もう言ってる事とやっている事が破綻している
・奥山さんが自殺したら「やっと死ねて良かったね、ホントに良かったね、だって辛かったんだもんね、ホントに良かったね」って思います
・本気で質問。なんで死なないの?
っていうか……なんで死にたいって言ったくらいで死ななきゃいけないんですか?(逆ギレ)
部活辞めたいとか会社辞めたいとか愚痴る人は世の中にたくさんいますが、いちいち僕みたいに全員辞めてたら世の中大変ですよ! 人生辞めたいも同じです。芸能人のインタビューに出てくる過去のエピソードで一番多いパターンって、「一時は自殺を考えたこともあった」でしょ。加護亜依だって雨上がり決死隊の宮迫だって元プロ野球選手の清原だってそうじゃないですか! 死にたいって言ったことある人なんて大勢いるし、そいつら全員死んでたら一億総自殺ですよ……! 死にたいくらい好きなときに言わせてくれよ! 堅苦しいな!
ぜー……はー…………。
とまぁ、不毛な話はこのへんにして、問題は休日に何をするかです。改めて冷静な気持ちでアドバイスを見返すと、「競馬場」というアドバイスが目にとまりました。
僕は生まれてこのかた28年、一度も馬券を買ったことがありません。ジゴロの祖父が競馬で億単位の金をスって、祖母のわりとあった遺産を潰した挙句、家族を捨てたため、僕の家はギャンブル厳禁の家庭だったのです……。だけど僕には、その会ったこともない祖父の血が流れているはず……ダメなじいちゃんの仇を取る日がやって来ました。
万馬券を当てる……じっちゃんの名にかけて!
コメント欄の人と同じく阪神競馬場に出かけました。その日はG1開催日でした。G1というのはボクシングで言えばタイトルマッチみたいなもの、とにかく強い馬が出て盛り上がるレースです。
僕は子供のときダビスタをしていたため、少しくらいの前提知識はあります。G1に出るのって、ゲームでも大変なんですよ。
ちょっと寝坊してしまい、開門時間に間に合いませんでしたが、第1レース開始前にはたどり着きました。自由席は既にほぼ埋まっていて、冬だからか、屋内席は満席でした。
野外席に適当に座ります。みんなスポーツ新聞を場所とりに使うけど、どれが自分のか、 わからなくならないんだろうか? そんな疑問を抱きつつ買ってきたスポーツ新聞を座席に置き、馬券を買うため離席します。あとで本当に全然わからなくなり、困りました。
それにしても……競馬場って、実際に来る前に思ってたようなイメージとは、ちょっと違いました。ガタピシいいそうな小汚い場所に煙草の煙がもくもくと立ち込め、オッサンたちが耳に鉛筆を挟み持ち、刺すか刺されるか殺伐とした雰囲気で馬券売り場に並んでいる……そんな想像は全く外れていました。
清掃は行き届いていてトイレも比較的綺麗だし、喫煙ルーム以外は禁煙です。若い人が多くて、カップルや、女性客だけの集団もちらほら目につきました。そして、ベビーカーを引いた家族連れがたくさんいるのです。中ではなんと戦隊ヒーローのショーみたいなイベントが開催されてるし、出店がたくさん並んでいて、B級グルメ感漂う食べ物やビールを売っています。なんだかいい匂いが漂っていました。芝生に寝転んで飲み食いしながら観戦することも出来ます。その様は、まるでどこか夏フェスのよう。総じて、平和です。僕はいまだにダイエット継続中なので、何も買わなかったのですが。
そういや、「誰に写真を撮ってもらってるのか?」という疑問がコメント欄で呈されていましたが、僕は友達がいないので、普段は母親か、セルフシャッター、通りすがりの知らない人にお願いして撮ってもらっています。今回は、JRAの人にお願いしたところ、快諾してシャッターを押して下さいました。おい無職、いい歳して恥ずかしくないのかって? そんなの、恥ずかしいに決まってるじゃないですか!!
さて、馬券はというと自動発券機で買います。ロト6みたいなマークシートに鉛筆で記入し、機械に挿入すると馬券を売ってくれるのです。僕はダビスタの知識を総動員してマークシートに記入しました。お金がないので、100円単位で買うことにします。
さて、第1レースが始まりました。……呆気なく負けました。この負けは第2レースで取り戻……負けました。第3レースは勝負をかけました。三連単です。これは1位2位3位の順番を全て予想する賭け方で、すごく当たりにくい分、当たるとデカ……負けました。ゴール前で2番につけていた馬が先頭を抜かなければ的中だったのにっ……!
悔しかったので、ビールを購入して一息に飲み干します。どんどん手元のお金がなくなっていきますが、酔わずにはいられません。これ、アレだ。僕、カイジとかに出てくる人だ……!
4レース、ついにその時が来ました。僕が予想した馬がワンツーフィニッシュ! 100円が1850円になり、それまでの損を取り戻しました。これに気をよくした僕はじゃんじゃん賭け続け……10レースまでを負け続けて過ごしました。財布の中はすっかり寂しい感じに。
G1レースは盛り上がる
そして迎えた11レース。G1阪神ジュベナイルフィリーズ。それまでみんなどこにいたんだ? と思うくらいの大勢の観客が、ゴール前に勢揃いしました。みんなこのメインレースを楽しみにしていたようです。鳴り響くファンファーレに合わせて、地響きのような手拍子が始まります。僕もなんだか楽しくなってきて、みんなと一緒に手を叩きました。興奮が高まってきます。
僕はこれまでの負けを取り戻すため、思い切って1000円を賭けました。当たれば10万円以上のお金が僕に入ってくるハズです。そしたら連載の行方も変わってきますね。一気に馬券で就活資金を稼いで、明日からすぐに就活です。いや、それどころか、勝ちすぎて馬券で生活出来るようになったらどうしましょう? 夢は限りなく膨らみます。
そしてスタート。一斉に、ゲートを飛び出した馬たちが走り出します。「いけー!」振り返ると、5歳くらいの男の子が野外席の上に立ち上がり、大人顔負けの歓声をあげていました。僕も一緒に叫びます。
「差せー!(抜かせ、の意味)」
そのときふと、いつかミョンちゃんに言われたことを思い出しました。
「あなたは、人生を楽しんでないの。それが私は我慢出来ない」
祖父はどうだったんだろう。
特攻隊の生き残りだからって、周りの人を不幸にする資格なんてない。今こんな状況でギャンブルに逃避してる自分自身を肯定出来ないように、僕は祖父の気持ちも肯定は出来ない。祖父はなんでバカみたいに毎日騙した女(祖母)の金でギャンブルをしていたのか。ただ、虚しさを一瞬、忘れられるから? 何かに賭けているときだけは、唾棄すべき平和な日常を忘れられるから? 馬鹿げてる。自分の人生に大したことなんて何も起きないし、どこに行けるわけでもないのに。でも、18頭の馬が蹄を鳴らしながらこちらに駆け抜けてきたそのとき、僕はたしかに祖父に近づいていた。あの馬のスピードに乗って、日常から逃げ出したい。人生を楽しめない僕のような人間は、だから、ギャンブルにハマるのかもしれません。今ここではないどこかに、何かが連れてってくれそうな気がするから。
……結局その日はトータルで、約2800円の負けでした。いや、もっと負けてる人もいるんでしょうけど……今の僕にとっては手痛い出費でした。嗚呼、僕は一体何をやっているんでしょうか?
やっぱりカエルの子はカエル、僕も祖父同様賭け事の才能がないみたいです。もうギャンブルなんか二度とするもんか……。
泣きそうな気持ちで兵庫から京都まで帰ってくると、乗換駅のそばで宝くじ売り場のおばちゃんと目が合いました。
「ドリームジャンボ、いかがですか?」
僕は少し迷ってから、「1枚ください」と言いました。