インタビュー

あなたを受け止めてくれる横道は、この世にたくさん溢れている。女が「ふざける力」を発揮する方法

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ワクサカ これは単純な僕の見てきた経験則の中のデータですけど、単身赴任の家の夫婦って超上手くいってるんですよ。

――たまにしか会わないから?

ワクサカ 僕の身近にいる単身赴任のご夫婦たちは大概上手くいってるし、楽しそう。みんな夫婦が距離的には離れてるのに「結婚ってやっぱいいよねー」って言ってるんです。会う時間は月に1週間、下手したら月に2、3回なんだけど、その方がお互いが「役割の意味」に縛られないからうまくいくんじゃないでしょうか。だから僕は結婚生活の一つのメソッドとして、アリだなー単身赴任って思って。別居婚でもアリだなーって。もちろん子供が産まれたらまた変わってくるけどそれはまたその時に夫婦で考えればいいし。それで言うと、別姓っていうのはもうちょい……

辻 意識の持ち方の問題ですよね、どっちかって言うと。

ワクサカ うん。いま喋ってたような結婚にまつわるアレコレをもうちょいギューッて記号化させていくと夫婦同姓/別姓の問題になっていくんだろうけど。

ふざけられない構図にいたら

――結婚して主婦になった女性で、会社に行ってない人が逸脱というかふざけたいなっていう時、どうしたらいいと思いますか?

ワクサカ ……ベランダで踊り狂うとか。……ベランダでモーニング娘。を踊ったり。

辻 大丈夫ですか? 引っ越しおばさんみたいな問題になりませんか。

ワクサカ なるかもね(笑)。逸脱は逸脱だけど、通報されたら、困るね。その前に近所の人が困ってんのか。あと何だろなぁ。…畳の上で一人相撲してみるとか。

――どっちも家から出なくても出来るやつですけど。家の構図から出たらダメなんですか?

ワクサカ ……うーん、これは僕は、『ふざける力』を書くにあたっても相当考えましたよ。考えましたけどね……真面目なことしか言えなくなっちゃうんですよ。専業主婦だったり専業育児者だったりって、その「家」という構図に、とことん捕らわれてしまうわけですよね。

――職場という構図を移り変わる(転職)よりも、家という構図を移る(離婚)のはハードルが高いかもしれませんね。

ワクサカ 難しいのは、お子さんを育てているケース。子供がいると本当に、世話をする立場の大人は自分の世界をなかなか持ちづらいから。こうなっている社会ってやっぱり間違ってるし。男女のどちらか一方が外にある構図で働いて稼いできて、もう一方が内側の構図でじっと……。もちろん共働きの家庭にだって、「自分の世界を持てない」っていう悩みはあるわけで。でもどっちにしたってやっぱり、その構図から「動けない状態」を強いる社会はおかしいです。育児だけじゃなくて、要介護の老家族を世話する人も同じで、「ふざける」フェーズが単身者と違ってくる。

本人の意識でどうにかなる状態じゃないですしね、スタンスを変えるくらいじゃ難しい。

――そうですね。物理的に、そこにいるから、自分以外の命がね。

ワクサカ 命預かるっていうのはマジなとこだから。命を預かってる状態でふざけるっていうのは、それはダメだ、やっちゃダメなことだから。うーん、難しい大喜利だな。難しいって言いたくないのに。ものすごく普通のことしか言えない。普通のこと言っていいですか?

――はい。

ワクサカ 友達と会話をすることです。

――普通だ。

ワクサカ 一回ここで強調しておきたいんですけど、僕が言ってる「ふざける」って言葉の意味は、つまり「別の構図に跳ぶこと」なんです。だから、「ふざける」っていう言葉が持ってる強みからちょっと遠いかもしれないですけど、育児や介護など家にまつわることで辛いことや悩みがあったら、まずは「友達」という別の構図になにげなく話しかけたりするのがいいのでは、と。結局、自分を救ってくれるのって、他人との付き合いだけだったりしますし。

――それはたとえば、パパ友とかママ友じゃない友達ってこと?

ワクサカ できれば。「子育て」という構図にいない人。そうじゃないと枠組みの中で完結しちゃうじゃない。会話じゃなくて、相談で終わっちゃうというか。自分の日常にいない、現在の自分にとって非日常な相手。それは別に、ちょっと疎遠になってた昔の友達に連絡とってみるんだっていいんですよ。で、それじゃ解決できないような深い悩みなのであれば、しかるべき行政などに相談しましょう!ごめんなさい、もうそういう真面目な質問には真面目にしか答えられないです。今日、「不真面目なインタビューですので、不真面目に答えてください」って言われた来たんだけど、これにどう不真面目に答えろってさ(笑)。

横道はたくさんありますよ

――ママとか介護とかのケア労働者の話に戻すと、その人たちがケア労働の構図から出られなくなっちゃうのはね、一方で長時間労働してる人たちがいるからじゃないですか。日本人働き過ぎ問題。

ワクサカ 都市部は消費社会でしかないから、もう辛かったら都市部から逃げたらいい、って思いますけどね。

――鳥取いいよ、って? 家賃2万円で住めるとこいっぱいあるんですよね。

ワクサカ うん。東京って人が多過ぎですよやっぱり。やばいなって思った、こないだの金曜日。忘年会を金曜日なんかにやっちゃったもんだから、帰りのタクシーが40分立ってても拾えず! もう、ちょっと帰宅難民状態なんですよ、みんな。別に金曜の夜じゃなくたってさ、電車乗ってもぎゅうぎゅうで窮屈だし。どの仕事も身体を使わないにしても重労働になっちゃってて。で、しかも、自分がやってる仕事に自分で価値を見いだせず、それを押し殺してまで給与のためだけに働いている人もいるわけで。
そういうことを皆さんやられて。それは素晴らしいことだと思います、この日本経済を支えててありがとう、おかげで僕みたいなろくでもない者が生きられるから。
でもさ、「あなたが楽しく生きる」ってことに、まずあなたの価値がありますから。辛かったり、やっていることに楽しさの価値が見つけられなかったら、いまいる場所で働くことからは逃げてもいい、って言いたい。
言いたいし、周りで辛そうにしながら働いている友人には実際に言うんけど、言っても死んじゃったやつとかいるわけで。突然死んじゃうんだよね。死の衝動って突然来るし。洗濯物干してたと思ったらからひゅーって家族の前で死んだ奴もいるし。
でも死んでほしくないから、そうなる前に逃げろ逃げろって思います。

――逃げる先がない、ってみんな思ってるんじゃないですか。

ワクサカ いや、思ってる以上に溢れてるから、横道は。あなたを受け止めてくれる世界への横道は、この世にたくさん溢れている。自死以外にも、たくさんある。逃げるっていう気力さえあれば、なんとかなる。というか逃げる気力があるうちに逃げろです。
逃げる気力がある人はこの本(『ふざける力』)を読む余裕もまだあるんですよ。でもね、とうとう逃げる気力が尽きてもうダメだってなっている人、本当に逃げろって言葉が必要な人には、言葉も届かないから。それは自分が追うところではないけど、色々と今後の自分の中の命題だなと思ってます。

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