インタビュー

あなたを受け止めてくれる横道は、この世にたくさん溢れている。女が「ふざける力」を発揮する方法

【この記事のキーワード】

辻 職場って、一人の雰囲気で変わりますよね。皆でガンガン働いて徹夜してやろうぜっていう空気を作る職場もあれば、うちの職場なんかもう、遅くまでいる奴は一番バカにされる感じなんです。いかにいないか、みたいな。競い合いみたいな。最終的に2時間くらいしかいない奴も出てきて(笑)。

ワクサカ 素晴らしいね。それいい働き方だよね、最高だよね。

――出版社ですよね、意外です。だって校了する時とか、机にかじりついてません?

辻 待ち時間が長いんですよね。だからもう会社内で待たない。今LINEもあるし、遊びに行って飲みに行って、最終のゲラが届いたと報せが来たら「あ、じゃあ会社行こう」って。

ワクサカ この話はいい話だから載せましょう(笑)。根性論がはびこってる長時間労働上等の職場でも、それは一人の力で変えられるってことでしょ?

辻 そう、一人でもなんか上手くサボってる奴がいると周りがそれに上手くライドして。

ワクサカ まず風穴開ける奴が入ってきたらいいんだよね。風穴開ける奴がいないってことだからね、窮屈な場は。

もちろん忙しいときは忙しいけど、忙しくないに越したことはないわけで。最終的な納期を守れれば、おおいにサボっていいんじゃないですか。

――自分の生活を自分のものだとか、自分の体が自分のものだっていう意識が低くなっちゃうんですよ、いっぱい働いてると。それで、自分のものなのに自分のために使えなくなってすごい疲弊しちゃってて。考える気力もなくなっちゃうから、働き過ぎ本当良くないと思うんですよね。

ワクサカ 働き過ぎ良くないっすよね。

でも、ワクサカさんはたくさん働いてますよね。忙しいのをいつも恥ずかしそうに言うじゃないですか。

ワクサカ もうね、働き過ぎてたんですよ、今年。恥ずかしいでしょ、働いてるアピール自体が恥ずかしいしね。でも俺まだ幼いから、受け止めて欲しいから「忙しかったですね」って言って辻さんにこうヨシヨシされたい。自分の中の女の子が。

――いっぱい働いてていっぱい稼いでる奴がすごいみたいになるけど、そんな働かないで稼いでるほうがいいじゃんとか思っちゃうんですよね。不労所得。

ワクサカ お金はね、キリないから、稼いでも。ある程度稼いだら、どこかのラインで、お金の価値ってもうこれぐらいなんだなっていうのに気が付きますよ。これ以上だったらもうそれは何百万でも何千万円でも同じだな自分の中で、っていう。また億の世界ってあるんだろうけど。ああ、キリがないとはいえ、いいなあ、億の世界…(うっとり)

――それでいうと、ワクサカさんが10月に出した単行本『男だけど、』(幻冬舎)の中に、旅先で知り合ったバックパッカーの話が出てくるじゃないですか。オーストラリアで重機を洗う仕事だったら、外国人でも月に70~80万円くらい稼げるって。

ワクサカ それ! 具体的なメソッド。そうそう、世界一周してる奴と会った時に聞いた話。そいつが具体的なデータをバシバシ言う子で、本当面白かったんですよね。ナオト・インティライミのような感じではないバックパッカーって、やっぱり面白いよ、次のこと考えてる。ふざけ続けてもうそれが日常になっちゃってるから。

――ひとつの構図にとどまらない人たちですもんね。私は旅行嫌いですけど。

ワクサカ オーストラリアのダイヤモンド鉱山で使っている非常に大きな重機を洗う仕事をしたっていう話でね。単純作業だけどキツイし、一人で一台洗わないといけないんだけど、でも洗えばそれだけの賃金がもらえる。すごく需要がある仕事で、でもみんながやりたがらないから70万くらいの価値が設定されている。

――健全ですね。みんながやりたがらない、けど大変な仕事だから賃金が高いと。日本の産業もそうあるべきだと思いますよ。保育とか介護とかの現場で、いかに賃金が低いかって。大問題なのに。

ワクサカ そうそうそう。保育士が給料低いのは本当間違ってるし、介護士が低いのも間違ってるし。
あと、そのバックパッカーの彼から聞いた話では、イギリスで治験(医薬品や医療機器の臨床試験)を受ける仕事もあってね、月70万円。治験に関してはもう体の話だから、あまり他人にすすめにくい話ではあるけど。帰国してからネットで調べたら、イギリス治験ツアーを組んでる旅行会社もあるんですよ(笑)

――どういうツアーですか?

ワクサカ イギリスにただで行こう!っていう。飛行機も宿も用意してくれて、観光しながら週に一回の治験を受けるツアー。すごくない? 治験といっても施設にカンヅメにならないで受けられるものがあるからさ。で、いっぱい楽しく観光をして、お金をもらって帰るっていう。うん、生きていける。横道は何でもある。

――横道がまるでないみたいに思い込まないほうがいいですよね。一回コースを外れちゃうと、その後の人生もずっと低賃金で重労働だよみたいな。挽回するには一攫千金しかないよ、いちかばちかだよどうする? みたいな。全然そんなことないのに。いくらでも横道あるしやり直しできるし、それこそ生活保護受けながら生活を立て直すことだって出来るのに。

ワクサカ そうそう。実は横道はいっぱいある。そう考えるとこれ(『ふざける力』)、なんか反政府的な本に思えてきますね(笑)。

――表紙にそう書いてありますからね。『いまのこの国、マジメすぎると思いませんか?』って。国家に喧嘩売ってますよ、ワクサカさん(笑)。

ワクサカ 売ったつもりはない! 年金は欲しい!

■ワクサカソウヘイ
1983年生まれ。コント作家。小説やコラムの執筆なども手掛け、また芸人としてコントカンパニー「ミラクルパッションズ」にも参加する。

■ミラクルパッションズ コントLIVE『我々は万博だ』
2016年1月27日(水)~1月31日(日)
@下北沢OFF・OFFシアター
http://mp-s.net/

(写真・構成/下戸山うさこ)

1 2 3