前編では世界の同性婚事情を紹介しましたが、では日本国内では実際のところ、同性婚はどんな感じになっているのでしょう? 法的な婚姻は憲法を改正しないかぎり無理ですが、いわゆる「事実婚」カップルなら、私の周りにもいます。昨年秋に“結婚”した40代のカメラマンと、同じく40代の会社員の男性同士なのだけど、何が一番大変か(だったか)について聞いてみると「結婚式を挙げること」だったようで……。
なぜなら結婚情報誌に載っていたパーティ会場もレストランも、同性同士と知るやいなや、すごい勢いでお断りしてきたから! 「今までにないケースなので、対応できない」という理由で断られ、30軒以上問い合わせてようやく、とあるレストランがOKしてくれたそう。式自体は感動に包まれて大成功したと聞いたけれど、参列者のなかの数少ないノンケ友人は、つい先日まで「同性だからって場所を貸さないなんて差別じゃん!」と、怒ってたっけ……。
しかし今年3月、ある出来事が起こりました。女性同士のカップルが、あのディズニーシーで結婚式を挙げたのです。しかもふたりとも、ウェディングドレス姿で。
当事者で元タカラジェンヌの東小雪さんのコラムによると、当初は同性婚の挙式そのものは問題ないけれど、一方がウェディングドレス、一方がタキシードの「異性カップルに見える装いならOK」という答えだった。しかし1週間後、本国のウォルトディズニーカンパニーと東京ディズニーリゾートで確認した結果、「ウェディングドレス同士の挙式も可能」との正式回答があり、ふたり揃ってのドレス姿での挙式が叶ったのだとか。
もともと2012年5月に、東京ディズニーリゾートの子会社であるミリアルリゾートホテルズは、同性同士のカップルでも挙式は可能という姿勢を見せていたけれど、これは東さんの問い合わせに端を発したもの。そして東さんとパートナーはディズニーリゾートで初めて同性婚を挙げたカップルとして、台湾など海外でも話題になりました。
ミッキーたちに祝福されての同性婚が叶うなんて、これは朗報! と思ったけれど、ディズニーリゾートでの挙式は、相場よりも結構お高め。結婚式場選びのサイト『みんなのウェディング』によると、東京ディズニーシー・ミラコスタにおける最終平均費用は425万5601円で、近隣にあるホテルオークラ東京ベイが280万5296円(同サイト調べ)なのを見ると、誰でも式を挙げられる場所ではない気がします……。
でも諦めるのはまだ早い!
というのも最近、同性婚をプランニングする会社が生まれたから。
“全てのセクシャリティに、結婚という選択肢を”をテーマにウェディングプロデュースを行うLetibee(レティビー)は、LGBT(レスビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの略)の結婚パーティとその後の生活をサポートする会社。慶應義塾大学生の外山雄太さんらが、今年2月に立ち上げました。ではなぜ、LGBTの結婚をサポートする会社を作ったのでしょう?
「自分自身がゲイ当事者なのですが、初めてお付き合いした男性に『いつかは別れなければいけないけれど、今幸せだからいいよね』と言われて、それがイヤだったんです。その人とは昼間は手をつないで歩くこともできなければ、友人と恋愛について話すこともできないのも悔しくて悔しくて。『どうして好きな人と一緒にいられないのだろう?』と思うようになり、大学に入学して世界の同性婚事情を知るうちに、日本でもできることがあるのではないかと考えたのがきっかけです」
現在は初プロデュースの女性カップルの挙式プランニングに追われているまっ最中、と語った外山さん。
「自分たちだけでなく、来てくれた人たちが楽しんでもらえる結婚式にしたいとリクエストがありました。またセクシャルマイノリティのシンボルであるレインボーカラーを使うのではなく、自分たちらしい雰囲気の結婚式にしたいもと言われています。彼女たちの姿を見て『同性のカップルも異性のカップルも一緒だよね』と気付いてもらえるきっかけになれば」と思いながら、準備に取り組んでいるそうです。
ふたりの式は今年11月を予定。かかった費用や内容なども含めて、挙式の模様はここでご紹介する予定です。お楽しみに!
(文=久保樹りん)