そもそも、「結婚したんだから家事をきちんとやっていつも家を清潔にして美味しい料理を作って旦那さんを支えて……」世間で求められる良妻賢母の姿はもはや「処女アイドル」と同じような実体のない幻想だ。自分の母親はそういう女性だったか? 実家が常にピカピカに片付いていたか、不要なモノで納戸がパンパンだったりハサミやペンがそこらじゅうに置かれていて雑然とした居間でゴロゴロしていたのではないか……胸に手を当てて考えてみてほしい。しかしこの幻想に、虻川自身が捉われてしまっていること、ここに夫婦生活がうまくいかない(離婚報道が事実ならば、であるが)理由があるのではないか。
理想の妻にがんじがらめ
昨年11月に放送された『アシタスイッチ』(日本テレビ系)で草刈民代と対談をした虻川は、結婚生活での悩みを草刈に相談していた。飲食店経営者で自宅で食事をすることがほとんどない桝谷氏は、「料理はしなくてもいい」と言ってくれている。しかし虻川は、「男は美味しい妻の手料理が食べたいものだ」という固定観念にとらわれ、“良き妻”を目指して奮闘しているとのことだった。彼女は料理が大の苦手で、味オンチ。それでも深夜に帰宅する夫のために夜食を用意しているそうだが、自分で食べても分かるくらいマズイものしか作れず、夫からもダメ出しを受けて毎晩落ち込んでしまうと話していた。
一方の草刈は、映画監督の周防正行氏と結婚しているが、バレエの舞台稽古を優先させるため、彼女は結婚後しばらくして料理をすることを諦めたという。草刈は、「虻川さんは“理想の妻”のイメージに無理やり自分を合わせようとして、自己嫌悪に陥っている」と鋭く指摘。また、草刈夫妻は子供を持たなかったが、虻川は「子供が欲しい、でも、母親になっても芸人の仕事を続けられるだろうか」という葛藤も相談。草刈から「本当にやりたいと思ったことは、やりぬいて」というエールをおくられていた。
草刈は「自分の人生の中心はバレエ」とはっきり決めており、子供を産まなかったし、甲斐甲斐しい妻にもならなかった。結婚して幸せな家庭を築き守っていくことが「女の幸せ」だというのなら、世間では草刈の生き方を「不幸」と見なすかもしれない。しかし彼女自身は後悔はしていないと言う。他方、虻川は芸人としての仕事の充実と、理想の妻を演じることと、母親になることと……多方面に意識が分散していて、かつそのすべてを器用にこなせるタイプではなさそうだ。また、夫の求めている「理想の妻」が、世間一般に言われる理想の妻像と完全に一致しているとは限らないのに、勝手に“世間の理想の妻像”を目指して突っ走り、失敗して落ち込む虻川は、空回りしているように見えて仕方がない。
夫は「料理はしなくていい」と言ってくれているにもかかわらず、「料理のできる女がいい妻なんだもん」と意固地な思い込みから苦手な料理に取り組み、結果、自己嫌悪に陥る妻……。家庭内に負のスパイラルが完成している。結果、夫婦間のすれ違いを避けられなくなっているのではないだろうか。