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オーガニック=安全、中国産=危険は真実か? 食の専門家がズバリ答えます

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いろいろ食べるのが大事! Photo by Jwww.Pixel.la Free Stock Photos from Flickr

 意識高い子育てや、環境に配慮したスローライフ、エシカル&オシャレな話題づくりetc.それらに欠かせないものといえば、〈オーガニック〉でしょう。安全かつ安心で、何となく真人間になったような気分まで味わえるオーガニックでありますが、これって本当に〈体にいいもの〉なんでしょうか? その前に〈オーガニックとは何ぞや〉と聞かれると、正直簡潔に答えられないため、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会のHP(http://www.jona-japan.org/)を見てみました。

農薬や化学肥料に頼らず、太陽・水・土地・そこに生物など自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法をさします。オーガニックが広まることにより、人や動植物、微生物などすべての生命にとって、平穏かつ健全な自然環境・社会環境が実現します」

 なるほど、コレがオーガニック。なんて、わかったようなわからないような。さらに読み進めると「あくまで一般的な食品と比べた場合、オーガニックは安全」と説明されているので、何とな~くで〈オーガニックは体によし!〉〈農薬や化学肥料を使わないほうがいい〉と解釈する人は少なくなさそう。しかし、健康についてのこれぞという根拠は見当たらず。

 ということで『理科の探検(Rika Tan)』(株式会社文理)の編集長であり、『ニセ科学を見抜くセンス』(新日本出版社)の著者である、左巻健男先生に、オーガニックのアレコレについて教えてもらいました。

 さて改めて、ズバリ〈オーガニックは体にいい!〉といえるのでしょうか?

左巻健男先生(以下、左巻)「有機JAS(農林水産省が定めた規定に合格した農林物資の製品)の場合、農作物の〈作り方〉がその規定にあっているかどうかは専門機関によってチェックされているでしょうが、その規定が〈体にいいかどうか〉まではわかりません」

農薬たっぷりとはいうけれど

 巷では〈農薬や化学肥料を極力使わない〉イコール健康、という印象が強いようですが

左巻「〈自然〉と〈天然〉がキーワードで、それは人工のものよりずっといいんだというような雰囲気がありますよね。でも実は自然にも、毒素がものすごかったり発がん性のあるような危ないものはいくらだってある。例えば、自然界のカビ毒(作物に虫食いが発生すると、このリスクが跳ね上がる)やヒ素(地中にもともと存在し、米や魚に蓄積される)などです。また、農薬は何かと悪者にされがちですが、無農薬栽培だとかえって作物は自ら毒を作り出す可能性があります。虫の食害から身を守るため、自ら作り出す防虫成分です。天然農薬(注)であるそれらの多くは、発がん性物質です。逆に農薬によって虫の害などから守られている野菜は、それらを発生させ自衛する必要はありません

※注=毒性学の第一人者・カリフォルニア大学のエイム図教授が、1990年に発表した論文で有名になった。虫の食害を受けると天然農薬が爆発的に増えるといい、調べた天然農薬52種のうち、27種が発がん性物質であることがわかった。

 オーガニックの場合は無農薬ではありませんが〈最低限の量しか使わないから安全〉と考える人も少なくありません。実際には、農薬たっぷりで体に悪い作物というのは、どの程度存在するのでしょうか。

左巻「農薬だって決して安いものではありませんから、バンバン大量に使うなんて、ありえないんですよ(笑)。(慣行栽培においても)コストの問題で、必要最低限しか使えません。昔は確かに、生物に悪影響を及ぼすような農薬が使われていた事実はあります。しかし『沈黙の春』(注2)がアメリカの農薬業界に影響を与えてから、世の中も変わらざるをえなかったんです。今、多くの農薬はバクテリアやウイルスに対して効果があり、ヒトに対して影響の少ないものに変わっています

※注2=1962年に出版された、米国の海洋生物学者・レイチェルカーソンの著書。農薬による環境汚染の問題を指摘し、世界に環境問題を問いかけたエポックメイキング的な作品として広く知られている。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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