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“男根のメタファー”のリテラシー/メタファーとメトニミー

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 作品キャラクターの女子高生たちが手にする大きな吹奏楽器が「男根のメタファー」である……との主張には、私は同意しません。男根のメタファーとしての何かをどうかする「キャラクターの行動」を描写した作品は世の中にいくつもあるけれど、『響け!ユーフォニアム』が際立ってそれを強調しているとか、非常に強い意味を込めている作品ではないと私は考えます。

 その上で、ですが、文学や美術や音楽、漫画・アニメをはじめとするサブカルチャーに至るまで、人間が作り出したものからエロスを完全に漂白することなど不可能です。

 世の中には、おそらく制作者が意図的にエロスを表現したものではない作品に、性的興奮を覚える人も少なくありません。「戦うウルトラマンの姿に性的興奮を覚える人」や「エレベーターに性的興奮を覚える人」、「鉛筆と消しゴム、のような無機物に性的ファンタジーを読み解く人」など、この世のすべてのものは「性的に解釈することが可能」であり、いくら当人が「いたってノーマルでマジョリティー」だと思っていても、知らぬ間に多様な形に倒錯していることだって少なくないでしょう。たとえ徹底的な規制を敷くことにより、エロスの完全な漂白が可能になったとしても、そこから何を受け取るかまでは規制することができません。また、漂白化によって得られるものより失われるものの方が多いのではないでしょうか。

 なにより、性的な欲望によって犯罪やハラスメントが起こることが問題なのであって、性的な欲望そのものが憎まれるべきものでは決してないということを忘れてはいけません。メタファーとメトニミーの違い、そして文化のなりたちの違いや文脈を読むことを怠ってはならないのです。

 公共空間やテレビCMなどの公共電波に、特定の人間や理念への差別や中傷が含まれていないか議論されることは必要だと思いますが、それは、特定の人間の価値観によって表現の「良い/悪い」が振り分けられないこと、またそれにより決められた「悪いもの」が言論統制に遭わないことが大前提になると思います(ゾーニングは本来、表現を尊重するために行われるものなのですから)。

 もちろん、現代の日本では、女性器のメタファーである船が女性キャラクター化された『艦隊これくしょん-艦これ-』が男性ファンを中心に大人気になったり、男性器のメタファーである刀が男性キャラクター化された『刀剣乱舞』が女性ファンを中心に大人気になったりなど、「フロイトが生きていたらどう読み解くのだろう?」と妄想したくなるような社会現象もありますが、現代にフロイトが生きていたとしても、「欲望を読み解くことと、欲望を否定・排除することは違う」と言ってくれるであろう、と、妄想してしまいます。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」