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夫からDVを受けていることを説明できず、「家族で暮らしたほうがいい」と諭されて…適切な言葉を使えないことの困難

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 外国語の勉強をすると「私、日本語も話せるし、若者方言も話せるんだからバイリンガルじゃない?」と、思ってしまいます。いや、上原が生まれ育った地域以外の若者方言も「どーんとこい!!」なので、マルチリンガルかもしれません

 ……などと、どうでもいいことを考えていると時間だけが過ぎ、すでに締切直前。焦って原稿を書き始めました。シングルマザー女子大生・上原由佳子です。

「助けて!」といっても助けてもらえない3条件

 上原が周囲で耳にする若者方言を日本語訳出来るようになったのは、ここ2年くらいの話です。でもそれは、若者方言を理解できるようになった、ということではありません。日本語がよくわかっていなかった(笑)。

 というのも、もともと若者方言ばかりで話す人達とだけ遊んでいたから、日本語の語彙が乏しかったんです。あいかわらずボキャブラリーは貧困で、原稿を書いていると「いつも同じコトバばかりだな~」と思うのですけど、これでもよくなったほう。前は、もっと酷かったんです。中学生? 小学生? レベルの語彙しかありませんでした。言い訳するなら、若者方言ってひとつのコトバに幾つかの意味があるから語彙を増やす必要が無かったんだもの。例えば「きじゃーす」ってコトバを使えば、状況に応じて「散らかす」って意味以外にも「怒鳴り散らす」「暴れる」とか、暴力的な意味にもなるんです。

 親しい人や似たようなコミュニティの間ではその状態でも会話が成り立ちます。でも、それ以外の人達と話すときに若者方言を使うと、言いたいことが上手く伝わらないので若者方言は封印します。

 困っているときは、近いコミュニティではなく行政など普段はあまり接しない人たちに助けを求めます。でも、「若者方言が通じない」「日本語の語彙が貧困」そしてこれまで書いてきたように、「暴力に対して無駄に免疫がある」、この3つの条件が揃ってしまうと、誰かに助けを求めても手を差し伸べてもらえない状況になってしまう。DV被害者、生活困窮者などを保護する女性専用シェルターにすら、助けてもらえませんでした。

 というわけで、今回は「DV被害」について書いてみたいと思います。

「娘ちゃんいらない!!!」

 本題に入る前に……今からおよそ6年ほど前の上原は、本当に最低で、母親失格でした。虐待のような話に抵抗がある人は、読まないでください、と言っておきます(苦笑)。

 元夫と離婚して1年くらい経ったころ。元夫から頻繁に「お金を貸して欲しい」という電話がかかってくる時期がありました。で、お金を貸さないと元夫は不機嫌になり、喧嘩になります。金額は小さいのですが、どうして貸さないといけないのか疑問ですし、元夫は「貸して」と言うけれど、返してもらったことがありません。「貸して=くれ」だったんですね。

 そのことに文句を言っても「お前が俺のこと好きで結婚したんだろ」「お前らのために俺は頑張ってる」とかなんとか、自分にとって都合が悪いことは全て上原が決めたことになっていました。要するに、元夫の言い分は「(俺に対する)責任をとれ」なんですね。結婚は上原が一人で勝手に決めたわけじゃないのに。

 前回、元夫が学校に怒鳴り込みに来たり、家の前で怒鳴り散らしたりしていくうちに、可愛いはずの娘ちゃんを受け入れられなくなっていった、という話を書きました。実は、その前から元夫の「お金貸して」攻撃と「お前の責任」攻撃があって、娘ちゃんのことを「気持ち悪い」以上の感情で見ていました。誤解を招く言い方ですが、本気で「娘ちゃんがいなければ、こんなことにはならなかった」とすら、考えてしまった時期があります。

 そのため、元夫が上原からお金を借りに(取りに)来たときに、「もう、娘ちゃんいらないから連れて行ってよ!!」と泣きわめき、娘ちゃんを叩いたことが一度あります。すると、元夫は上原の首を、息が出来ないくらい強く締め、脚を強く蹴り「子どもに当たるな!!」と、怒っていました。これは、元夫の言うとおりですね……。とはいえ、元夫が娘ちゃんの様子を気にかけているふりをして、お金をせびりに来るのにうんざりしている、と何度も話したのに、全く伝わらない。それどころか、逆上するわけです。

 元夫の理解不能な行動に加えて、家では祖母の嫌味……。母からの「元夫と娘ちゃんを会わせるな」というプレッシャーもありました。この時期の上原は、最高潮に狂っていたので、いつキレるのか自分でも分からないし、気がつくと娘ちゃんに手を上げそうになっていることもありました。

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上原由佳子

1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

@yu756ka