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自立を促しているはずなのに、結果的にひとり親家庭を苦しませている使いづらい制度の問題点

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資格が限定されている上に……

この制度には他にも落とし穴があります。それは、学費とその人が医療系の職業に従事できる身体をもっているのか、という問題です。

ご存知のとおり医療系の学校の学費って凄く高いんです!!! 授業料だけでなく、実習で使う服とか、教科書代とか、様々な費用がかかります。看護の専門学校なら下手すると年間100万円を超えますから、3年間で300万円以上。理学療法士・作業療法士の専門学校も調べてみたのですが、まさかの年間120万超えでした。そもそも経済的に余裕のない人がこんな高額な学費を支払えるのでしょうか……?

さらに問題なのは医療系の職業に従事できる体力があるのか、です。

医療系の職業は相当ハードです。毎日患者さんのお世話をしなくちゃいけないし、命を預かっているわけですから常に緊張しっぱなしです。不規則な生活も続くので、肉体的にも精神的にもかなりツラいと思います。ですから、はっきりいって上原には、医療系の職業に就く自信がまったくありません!!!

そもそも上原はアトピー性皮膚炎を持っているので注射器を使うのは、デンジャラスです。消毒液が染みて痛いですし、常に傷がある状態ですから感染症のリスクを考えると、恐怖以外のなにものでもありません。病院で採血されるだけで、冷汗ダラダラ、眩暈もするので、注射器なんて絶対無理(苦笑)。

そう、この制度、持病を持っていたり障害を抱えている人が制度を利用することを想定してないんですよ! どんな制度にもこういう落とし穴がありそうですが……。

自立を促しているはずなのに

それに「学校に通っている間の生活の負担を減らすための給付金」というのが気になります。これ、言い換えると「学費は自分でどうにかしてね! 2年間は月10万あげるからさ!」ってことなんだと思うんです。でも、子育てをしながら学費を稼ぐなんて、なかなかできないことです。

資格を取れたとしても、就ける仕事は低賃金。高等職業訓練促進給付金を使うだけでなく、奨学金も借りて学校に通ったら、卒業後に待ち受ける奨学金の返済。子どもの教育費なんて捻出できなくなるに決まっています。それどころか、子どもとの時間を削って働くことになりそうです。それって子どものためにもよくないのでは?

「高等職業訓練促進給付金を活用できるから医療系に進学」「制度が使えるから介護士か保育士資格が取れる学校に行く」なんて、上原の無謀な大学進学と同じくらいリスキーです。でもこの制度は、むしろそうなることを促進してしまっているように感じます。毎月10万は確かに助かります。制度を使わないで学校に通うよりは、制度を使ったほうが学生の間は楽です。でも取得できた資格を活用できる仕事が低賃金だったら、あとで苦しくなるわけですからね。

それに、地域によって求められる人材って異なると思うんです。

例えば沖縄県の場合、教職よりも観光・サービス業の方が求人あります。ちょっとでも中国語が話せるように勉強したほうが、沖縄県内の企業には就職しやすくなるかもしれません。教職よりも倍率は高くないでしょうし。

使いづらい制度に順応しすぎでは?

とはいえ、いまの制度を大胆に変えるのは難しいことだと思います。でも工夫すれば使いづらい制度も活用できるようになるはず。

例えば、高等職業訓練促進給付金は「各都道府県、市町村の長がOKを出している資格」であれば利用することができます。だったら、都道府県や市町村がOKを出している資格を活用できるような仕組みをその自治体が作ればいい。それだけでも「頑張って資格を取ったのに、仕事がない!」という状況はなくなりますよね。

上原が長年患っている鼻炎に慣れてしまっているように、行政と当事者も「現行制度の枠内で出来ることしたら良い」と、実態から離れた制度に慣れ親しみすぎているような気がします。そして、問題のある制度をそのまま使うことを「賢い」と勘違いしている人達もいるような気がします。だけど、このままじゃ何も変わらないし、使いづらさや貧困が連鎖していくだけだと思います。使いにくい制度なら、どうやれば使いやすくなるのか、どうすれば多くの人が助かるのかを考えたほうがいいと思うんです。

「子どもの貧困問題」なんて言い方をしていますが、もとを辿れば「親の貧困問題」であることがほとんどです。子どものためにも、もちろん親のためにも、どういう制度が多くの人にとって望ましいのかを考えるべきです。

この原稿を書いている間、苛立ちがおさまりませんでした。気付いたら風邪を引いて、頭が痛くて苦しい(涙)。バカは風邪ひかないはずなのに!! 悔しいです!! というわけで、皆様も風邪をひかないように気をつけてくださいね。

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上原由佳子

1988年生まれ。沖縄県在住。シングルマザー女子大生。女子力の欠片もなさを小学1年生の娘ちゃんから指摘される、どうしようもない系アラサー女子。

@yu756ka