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夢破れて就活あり どうやって夢を諦めて大人になりましたか?

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就活をするのにあたって、一番邪魔なものがあります。

それは、夢、です。

本棚に並んでる本、パソコンの中の書きかけの小説、そういうのが、ふとしたきっかけにこちらに語りかけてきます。

「お前いいのか? こんな風に終わらせて」

小説を書くために会社をやめて、三年が過ぎました。ずっと小説を書いてきた僕ですが、それも諦めなくちゃいけなくなった。というのに、僕の心は相変わらず中途半端です。心のどこかに、その夢が残っていて、何故か醒めてない。

中途採用の就活では、職務経歴書、というものを書くことになります。大学を卒業してから、自分が何をしてきたか、冷静に振り返る必要がありました。結論としては、僕はたいしたことは何もしていませんでした。僕から小説を抜いたらあと、何が残るんだろう。職務経歴書を書いていたら、心にぽっかり穴が空いたような気持ちになりました。

「肺炎ですねぇ、たぶん」

あまりにも咳が収まらないので行った病院で、なんともアバウトな診断を受け、帰り道。

咳が、エンドレスで止まらない。

風邪なのに無理してバイトを続けて徹夜で原稿書いたりしてたせいでしょうか。ゴホゴホしながら、橋の上からしばらく水面を眺めて過ごしました。視界の水面は、どんどん滲んでいきました。

人間って、なんで生きてるんだろうな。

死ねばいいのにな。

もう何度も何度も思ってきたことを、飽きもせず僕は再び思いました。

終わる世界

肺炎のせいなのか、根性がないのか、あるいはそのどちらのせいでもないのか。就活をやる気がなくなってしまいました。というか、何をする気も起きない。全身の倦怠感が尋常じゃないのです。

これまでの人生で、ここまで何もする気が起きなくなったのは初めてでした。今までは、なんだかんだ僕はダメだ終わりだのと言いながら、酒を飲んだりくだをまいたり文章を書いたり、色々する元気はありました。

酒なんか飲む気にもなれません。食欲も性欲もない。電気をつける気力も湧かないから、つけない。立ち上がる気力もないので、薄暗い部屋で、目を閉じて寝てばかりいます。ネットをする気力すらゼロ。アニメを見たり本を読んだりする気力も湧いてきません。風呂にも入りたくない。バイトは一旦やめたので、外出する予定もありません。それで、僕は10日以上、風呂に入っていません。すげー体はかゆいけど、風呂に入るのが面倒臭いので、入りません。こういうところから人間は本当に駄目になるんだな、という気がします。僕は近ごろ、廃人みたいな生活を送っているのです。

デジタルデトックスなんて謎のフレーズが跋扈する昨今、みなさんは、何もせずに一日を過ごしたことがありますか?

これ、すっげー、暇です。

娯楽がない。単純に、起き上がれないから、娯楽にアクセス出来ないのです。テレビを見るのすら、一定の体力気力が必要なのだと思い知りました。それで「たぶん肺炎」は一向に治る気配がありません。

そんな風に、一切の娯楽や生活、仕事から切り離されると、人間はどうなるでしょうか?

自分の、記憶と思考だけが、娯楽になるのです。

僕の29年の人生を過ぎ去っていった人たちの声や姿が、現れては消え、現れてはまた消えていきます。鬱陶しいくらいに。

「私、奥山さんの文章の、ファンなんです。この世で一番、好きなんです」

そう言ってくれた女の子が昔、この世にいました。自殺したので消えました。

僕に関わらなければ生きていたかもしれないと思うことが半年に一回くらいあります。僕たちはかなり仲の良い友だちで、毎晩電話やメールで会話をしていました。それが居心地が良かった。ある意味では、恋人よりも大事な存在だったかもしれません。記憶は、薄れていきます。死んだ人の輪郭は、どんどん僕の脳から消えていき、思い出せなくなっていきます。

それからもう一人、自殺した友人がいました。彼は自分が死ぬところをビデオに録画して死にました。彼の友人からコピーしてもらい、だから僕の手元にその映像はありました。一時期は毎晩見ていたその映像は、今はiPhoneの中にもこっそり保存してあるので、好きなときに見返すことが出来ました。

「死にたいなぁ」

というのは当時の僕たちの、合言葉のようなものでした。僕たちは「死にたい同盟」でした。参加条件は死にたいこと、脱退するには、死にたくなくなるか、死んでしまうしかありません。生き残ったのは僕だけでした。なんで僕みたいな薄汚い人間が生き残るのでしょうか。

僕は自分の文章で、誰かを救えると思っていました。だから、書いた。書いてきた。でも、誰も救われなかった。小説は人の魂を救わないんでしょうか。小説は僕の魂を、救わないのでしょうか。どう思いますか?

雨戸は閉めっぱなし、太陽の光は室内に一切差し込んできません。時計を見なくなったので、今が何時なのかわかりません。何月何日かも知りません。昼なのか夜なのかもわからない時間を過ごしながら、そう言えば原稿の締め切りいつだっけ、と思いました。でも、もういいや。全部いいや。どうせ叩かれるし。意味ないし。相談したいことなんて、本当はもう、そんなにないのかもしれません。僕には何もないのかもしれません。僕はただの詐欺師だったのかもしれません。今まで騙してきてすいません。僕には何もなかったようです。空っぽの人間だったようです。

今回の相談「完全に、完膚無きまでに、夢を諦める方法を教えて下さい」

これは珍しい話ではないと思います。よくある話だと思います。

夢を諦めないと、僕は前には進めません。

そこで今回の相談です。

完全に、完膚無きまでに、夢を諦める方法を教えて下さい。夢を終わらせないと、たぶん、僕はこのままいつまでも廃人生活を続けるハメになりそうなのです。早く想いを断ち切って、就活に頭を切り換えなければいけません。社会復帰を目指さなくてはなりません。

全てを捨てて、新しい自分に僕は生まれ変わりたいのです。皆さんは、夢を諦めた経験がありますか? あったとしたら、そこからどうやって立ち直りましたか? ぜひ教えて下さい。よろしくお願いします。

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

http://d.hatena.ne.jp/murahito/