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一体何に怯えてるの? 「守られたい願望」女子のホンネとプリンセスの女らしさ

【この記事のキーワード】

「かわいい、保護が必要、かよわい、かわいそう」

お姫様とジェンダー

若桑みどり『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』ちくま新書

 千葉大学の名誉教授を務めた美術史学者の若桑みどり氏は、2002年に出した『お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(ちくま新書)にて、男女両方への幼少期からの“刷り込み”を鋭く、しかもわかりやすく指摘していました。

 シンデレラ、白雪姫、眠れる森の美女。私たちが慣れ親しんだプリンセスストーリーでは、美しい姿と清き心を持った若い女性が、不遇に見舞われるも、王子様に救われて幸せな結婚をします。めでたし、めでたし。彼女たちは自ら「玉の輿にのってやろう!」と鼻息荒く行動を起こすことはありません。ただ微笑みを絶やさず苦難に耐え、あるいはじっと眠り続けます。

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 つまりこのストーリーは、美貌と従順さがあれば、王子が来てくれて、幸福な結婚ができるという女性の生き方を教えてくれるものだが、このようにして、男子が幼時から自立への教育を受けるのに反して、女子はかわいらしく弱いこと、だれかに守ってもらうことを教育される。(中略)

 このようにして育った女子は、成長しても幼児性に固着する。「かわいい、保護が必要、かよわい、かわいそう」と思われることが彼女の生き方になる。女性は幼児性を一生引きずり、自分を幼児のようにかわいい状態におくか、または幼児と家庭に執着する。世の中に乗り出して仕事をすることは女らしさを失うこと。男性化とみなされる。学校、仕事、生活手段を得ること、契約を結ぶこと、金銭を得ることは苦しい。男子はそれを一生自分でやることを覚悟させられるが、女性はいつか結婚によって解消し、人生のたたかいから救い出されることを夢見る。幼時から聞いたお姫様童話によって無意識に刷り込まれた他者への依存、無力であることの自覚を生涯ひきずるのである。他者によって守られていたいという心理的依存状態―これがシンデレラ・コンプレックスだと著者は定義する。

『お姫様とジェンダー アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(ちくま新書)p57、58

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 シンデレラは意地悪な継母と2人の姉にこき使われて過ごしていますが、ある日、舞踏会へ行くチャンスが巡ってきて、王子様に出会います。しかし、帰り際にガラスの靴を落としてしまい、王子様はガラスの靴にぴったりと足の合う女性を探します。このガラスの靴は、サイズがとても小さいため、姉2人には入りません。「小さくて弱々しい少女」のイメージが靴の小ささにも表れているようです。

 誰もが小さい頃、これらの童話を読んだり読み聞かせてもらったりした経験があるでしょう。ディズニーがアニメ映画化し、プリンセスたちは女児たちの間で人気キャラクターにもなりました。

 お姫様は受動的で優しく従順。疑い深さなど微塵も持ち合わせていませんが、危機管理能力のなさも「清らかな心」のせいなので仕方ありません。しかしそんな彼女たちの振る舞いを、現実の人間が真似してしまっては破滅します。

 でも、幼少期に「理想的な幸福を手に入れたプリンセスストーリー」への憧れを刷り込まれ、つまり「幸福を手にする女性とはこういう人なのだ」と思い込んでしまうと、払拭は困難なのかもしれません。男女平等の教育を受けている学生時代は努力家で成績も良く優秀な女性であっても、社会に出てから「そろそろ結婚は?」という局面で、「自分は男性が守ってあげたいと思うような女じゃない」と卑屈になり、壁を感じてしまう——なぜなら、「自分」はかよわく・かわいそうで・保護が必要な存在ではないから。でもそれって、人間として健全な状態です。なのに「女性らしさに当てはまらない」と自虐的になり、プリンセス的な「女性らしさ」に合わせようと愛されテクを意識してみたり、自力で年収500万円以上稼げて自立した生活を送れるにもかかわらず、「守ってもらいたい願望」にとらわれてしまったりする。なぜなら守られることは「女性らしさ」そのものだから。女性は誰かに守ってもらうものなのだ、と教育されているから、です。お姫様=女性らしさの象徴が女性の生きにくさにも繫がっているのです。

 にも関わらず、プリンセスストーリーはいつの時代も女児から人気です。それがファンタジー・娯楽であることに気付くのが早ければ、もう少し生きづらさを回避できるのかもしれません。

 じつは筆者は大学生の頃に、上記の書籍を教材にした講義を受けました(若桑先生による授業ではありません、念のため)。その際、「シンデレラは大嫌いです」と意見をした学生がいて、衝撃を受けたことを印象深く覚えています。おそらく彼女は自立派の女性だったのでしょう。

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姫野ケイ

ライター。1987年生まれの宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。学生時代は出版社でアルバイトをしつつ、ヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。猫とお酒を与えていれば喜ぶ。

@keichinchan