
(「CanCam2013年7月号」小学館)
『CanCam』7月号の大特集は「この夏、『ぷに子』がかわいい理由」。今回『CanCam』編集部は「あなたがキュンとする女の子って?」と男子100人にアンケートをとった結果から、今「ぷに子」、つまりは「ぽっちゃり系女子」がキテいると導き出したそうでございますが、はたして……。
まず注目なのは、第一期ドロリッチ・ガール(※グリコ乳業の飲むcafeスイーツ・ドロリッチのCMで踊るエロかわグラドル軍団)において4番打者的存在だった中村静香さんのインタビューです。ここで彼女は「自分の体質にあった体型がもっともビューティフルなのよ」的な、その手の女性には心強い言葉を放っておられます。ほとんど球体的と言ってよい彼女のバディは男性目線でもソー・グッドでしょうし、肉感的でプニ子がモテるという主張にも説得力を感じさせます。かつてであれば彼女など「樽ドル」と呼ばれてもおかしくなかったはずです。なのに今では、樽どころか女神扱い。これは本当にトレンドが「ぷに子」にキテいる証明なのでしょうか?
しかしながら、冒頭のストリート・スナップはいかがなものか……。別なページで「ぷに子」と「おデブ」のあいだに境界線を引いているのにもかかわらず、明らかに「おデブ」が紛れ込んでしまっているではありませんか。およそファッション誌らしくない、膝にお肉がついた女性の写真が拝めるのは興味深いですが、「どこまでが『ぷに子』なのか」は依然曖昧。『CanCam』編集部すらもこの題材を扱いきれていないのでは、と邪推したくなります。
「ぷに子」は従順で都合が良い肉人形?
最大の問題は、特集導入部で用いられている男子からのアンケートです。「いいお母さんになってくれそう」「素直」……と言った「ぷに子支持系男子」のコメント。裏を返せば彼らは、「なんでも許してくれる都合の良さ」、「従順であること」を求めていて、おまけに「Hが気持ちいい」という意見も加えると、ぷに子支持者たちがぽっちゃり女性に対して性奴隷兼母親という大変に気持ちの悪い役割を期待している、と解釈できます。これではまるでデブの弱み(太っているというコンプレックス)に付け込んで都合の良い女性をつかまえる人非人ですよ!
お笑いグループ、パンサーの向井慧さんの「“やせたらかわいいのに”っていう子がいい」という発言も、「俺は太ってる子も受け入れる度量がある」とアピールするポジション・トークに過ぎません。また、「ちょっと自信がない子って守ってあげたくなる」「いつも一生懸命な頑張り屋!」にキュンとくるという男子意見からは、「デブは仕事ができない」とか「デブはいつも明るい」などのステレオタイプなイメージが浮かぶようです。経験上たしかに仕事ができるデブは少ない気がしますし、陰湿なデブなど暑苦しい存在でしかないんですが、太ってなくても自信がない子は守りたくなるでしょうし、頑張り屋を応援したくなるのが人情というもの。ちょっとまってくれ、全然これ「ぷに子」の人気と関係ないですよ!
男性側の意見として載せられている文章が、こうしてのきなみ暗澹たる様相である中、タレントのJOYさんだけは信頼できそうです。「ぷに子」の外見について、肉によって衣服が「はじけとびそうな、そのスパークした感じ!」がグッド、とフェティッシュな本音を語っていらっしゃる。ここまではっきりと自分の好みを言語化できる男性ならば「ぷに子」の人も安心してお付き合いして良いと思います。
しかし、それ以外の男性は「ぷに子」がちょっと自信をつけて、男性にとって都合が良くなくなってしまった瞬間、「このデブ、ちょっと甘くしたら図にのりやがって!!」と手のひらをかえすにちがいありません。男性がちょっとぐらい太った女性を受けて入れてくれるのは事実でしょう。でもそれは、「太っているから好き」とは異なります。ぷに子の方々にはメディアに煽られて、変に自信をもたないことをおすすめします。
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