〈昔はよかった病〉は、マナーをねつ造した江戸しぐさをはじめ、環境健康ライフスタイルなどさまざまなジャンルにありますが、〈食〉の世界にもバッチリ存在します。
昔はなかった農薬や化学肥料、添加物を「悪!」とするのは定番ですが、さらに過激になると電子レンジや冷凍もよろしくないとされるアレです。その理由は、〈栄養素が壊れるから〉。そりゃとれたてをその場ですぐに食べたほうが栄養価は高いかもしれないけど、健康を害するほど問題のあるものなのでしょうかね?
「変わり果てた日本の食卓を斬る!」
そんな勇ましいテーマで数多くの本を出版しているパティシェが主催する料理教室でも、ほんわかトークの中に、「昔の食はこんなに素晴らしかったのに、今の日本は嘆かわしい!」という、ディスりトークがてんこ盛りでした。
料理教室は〈オトナ文化〉を発信する都心に隣接したスポットで開催され、私が参加した回では参加者全員女性で、パッと見20~40代くらいといった雰囲気でした。「皆、当然(教室主催者の著書である)料理本は読んだことあるのよね?」とチェックしてくる常連風の40代から、それに対し「全くありませ~んっ(笑)」と元気よく返す一見さん風までとさまざまなスタンスの人が来ているようで、野次馬的な私も完全アウェイではなく、まずはちょっとひと安心。
いまの日本の食卓は栄養不足
料理教室がはじまるとレシピが配布され、講師の話とともに料理の実演見学が始まります。栄養があるという野菜の皮やあくは取り除かず、フライパンの焦げや塩によって野菜から出た水もまた戻して使うというのが特徴で料理そのものはとても面白く、かつ美味しそう。
しかし調理をしながらの解説で、〈あーそれ言っちゃう?〉なコメントも早速お目見えです。
講師「最近の料理研究家さんなんかは、皮つきのまま調理したり、こういった切り方をしている人も増えてますけど、なんでだろ、うちの本もあちこちで見られているのかな。ふふ」
〈巷の皮つき&歯ごたえ料理は、あくまでうちが元祖である〉といわんばかりのアピール。そういうのはご自身で言わないほうが、権威の品格漂うと思うのですが~。