そしてキモは、いかに今の日本は栄養不足か、あく抜き皮むき電子レンジや下茹で、果ては化学肥料や農薬などの影響で、作物の栄養素が大幅に減少しているかというお話。
講師「実際そういうごはんを食べて、うちの子は潰瘍性大腸炎になりました(きっぱり)」
よくある話ですが、料理のせいでそうなったのかどうか実際は因果関係がわからないのでは……。
愛情料理研究家の土岐山協子氏が、趣味活動を楽しむ昨今のお母さんたちに「首絞めて水につけてやろうかこのやろう」とブログで毒づいていたアレも同様ですが(幼少期、自分の母親が趣味に没頭してみそ汁が不味くなったことを引き合いに出している)、つらい思いをしたのは気の毒だけど、怒りの矛先を食材やらそれぞれの家庭事情に向けないで欲しいです。これは、〈手をかけて昔ながらのごはんを作らないと、愛情と健康が損なわれますよ〉という呪いでしょう。呪いの愛情ごはん。
レンチンやめれば不妊も治る?
調理器具もディスられていました。ビンゴの景品やちょっとしたプレゼントに便利な〈シリコンスチーマー〉を、「あれ、もらっても困っちゃいますよね(電子レンジを使う器具だから)」と、雑談のふりして破棄推奨。後方からはすがさず主催者である男性が、「悪魔のプレゼントだよ、あれは(笑)」とおもむろに合いの手を入れてきます。いいじゃん、シリコンスチーマー。蒸し野菜、美味しいじゃん。
講師「(電子レンジ調理は)何もいいこと、ひとつもありません」
はい、失礼しました。
そんなお話とともに、またもやプチ自慢が再登場。過去に有名エッセイストがこの料理教室にやってきたそうで、
講師「あのお年まで活躍されているのは、やっぱり食をおろそかにしていないからなんですね~」
とのこと。うちの料理教室に来る人は、意識高いのよと言わんばかりの自画自賛モードは、自分で「偉業」「前人未到」と言っちゃう谷亮子みたいです。セールストークとはいえ、ここまで自分上げを口にできるのって、すごいっす。
教室では「昔の日本の食材は今より美味しかった」と言うけれど、それは主催者の記憶と味覚であるうえ、今となっては比較しようがないものなので、いくらでも好きなように言えますよね~という感じ。足りない味を補うために生み出されたという料理はとても美味しかったけど、〈こうすると美味しい〉だけじゃいけないんでしょうか。