インタビュー

「本当は結婚したくないのだ症候群」とはどういうことなのか?/北条かやさん

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理想的な「結婚」のモデルケース

 拡大傾向が続く婚活ビジネス。筆者も婚活ムック本の作成に携わったことがあり、婚活パーティーや街コンを何度も取材しました。しかし現場には、結婚したいかどうか自分の中でよく考えてもいない段階なのに「さあ婚活しましょう!」と煽られて焦り、とりあえず婚活をしている人も少なくありませんでした。

 『本当は結婚したくないのだ症候群』のリリースには、「独身の8割は結婚したいらしい。でも、結婚したいと言いながら本格的な婚活はせず、参加するのうは女子会ばかり、という人も実際はとても多い」とありますが、本格的な婚活現場でさえ、戸惑いを払拭できないでいる参加女性は多いように感じています。

――最近では自治体が介入した、町おこしと婚活を絡めた街コンイベントがあちこちで開催されるようになりました。

北条 はい、2013年には政府が補正予算で総額30億円の助成金を自治体に出すことになり、結婚のすばらしさを伝えるフォーラムやキャンペーンに使われているんですよね。

――私は以前、自治体が主宰する街コンのイベントを取材したことがありますが、某政治家さんや区長さんの挨拶する場面で、皆さん口を揃えて「ここで出会って少子化対策に貢献してほしい」と言っていて興ざめしました。

北条 結婚をして子どもを生んでほしいというのが見え隠れするのが嫌なんですよね。国力を上げるために子どもを産むのではありません。国家としての理念があるのは良いことですが、その理念のために国民を利用しちゃダメだと思います。国家のために生きているわけではありません。リンカーンを持ち出すまでもなく、国家は民のためにあるという状態であるべきです。

――いざ、結婚して子育てというターンに入ると、現状では女性側にだけ甚大な負担がかかる社会構造になっています。

北条 結婚相手が無償でケア労働を担うことがこの国の常識でした。家庭内での主なケア労働の担い手は女性ですが。男性が養う代わりに、女性が身の回りの世話をする。しかし、そうしたモデルケースは今の時代では実現しにくくなっています。男女ともに非正規雇用の人々は増加していて、経済は低成長のまま回復の見込みもないので、夫が妻子を養い、妻が無償のケア労働に励むような家庭を維持できる人が大多数ではなくなりました。こんな時代に旧来の幸せの鋳型に自分を当てはめようと婚活を頑張っている男女がいて、その結果、努力が実らずに心が折れている。非常に非合理的なことをやっているなと思います。結婚で女性が「あなたをケアする代わりに経済的な安心をください」と求めるのも、ムシの良い話ですよね。承認を与えるかわりにATMになってねということじゃないですか。

――愛を理由に扶養してくださいということですかね。

北条 その要求に納得する男性がいる、それでこそ男であるという価値観を捨て去れないのも、時代に合わない理想的な結婚のモデルケースが、非合理なまま維持されてしまう一因ではないでしょうか。

――男性はお金の面での責任、女性は育児での責任という分け方が不都合を生んでいることは散々言われ尽くされてきた感がありますが、未だ解消されません。各家庭ごとに役割を分担すれば良いのですが、社会的なジェンダーロールとされてしまうと、男性は子育てを理由に会社を辞めることはできないし、女性は働き続けることが難しい場合があります。

北条 自立した者同士の対等なパートナーシップで、「じゃあ私はこの家事をやる」「僕はこの家事をやる」っていうのは良いと思うんです。掃除や洗濯が好きな男性がいてもおかしくないじゃないですか。やりたい方がやればいい。でも、特に子育てとなるとまだまだ社会が許さないところがあります。なぜなら、子育てをやろうとすると、子供の生活リズムに大人が合わせなければいけないからですね。働く男性が、生活リズムを子供に合わせること、つまり夕方に仕事を終えて帰宅することがまず難しいとされている。

今、共働きの家庭でも家事の8割は女性がやっている状況ですし、男性が育休をとると白い目で見られます。社会全般に蔓延るジェンダーロールは強固です。

性役割を本質的なものだと思っている人が未だに、若い世代にも多いです。本質的なものだと思っているから、結婚のモデルケースも時代に即したかたちに変わっていかない。

――この話をしていると、結局は「仕事か家庭か」を選ばざるを得ない働き方、長時間労働の問題にいきつきますよね。

北条 働き方ですよね。会社員の長時間労働は、会社への忠誠心を試している。今、保育園の不足(待機児童問題)が注目されていますが、女性が会社で働き続けることで生じていると思われ「女性の問題」で片付けられてしまいがちなこうしたテーマも、元をただせば、子育てが女性の担当とされてきたこと、男性が仕事中心の生き方を是とされてきたこと、子持ちの女性が身軽な(ように見える)男性側の都合に合わせて働かざるを得ないことなどが複雑に絡んでいます。男性に自分事として考えてほしいので、まずは男性が自分自身の働き方を見直そうと。でも、「モーレツ社員」が当然だった頃の価値観を持った世代が経営者や管理職に就いていれば、社員はそうした働き方を変えることが難しいですよね。上の世代が変わるのを待っていたら私達も年を取っちゃいます……。また、長時間働かないと現場が回らないという、働き方の「生産性の低さ」も問題です。

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姫野ケイ

ライター。1987年生まれの宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。学生時代は出版社でアルバイトをしつつ、ヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。猫とお酒を与えていれば喜ぶ。

@keichinchan