インタビュー

「本当は結婚したくないのだ症候群」とはどういうことなのか?/北条かやさん

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お金があれば子どもを産みたいか

――結婚と出産・育児がセットで語られ、結婚したら子どもを産むのは当たり前の風潮があります。北条さん自身は「事実婚ならしたい」と先ほどおっしゃっていましたが、子どもについてはどうお考えですか?

北条 俵万智さんという歌人の方が、赤ちゃんを生む前後に詠んだ歌集『プーさんの鼻』(文藝春秋)には、「記憶には残らぬ今日を生きている子にふくませる一匙の粥」という短歌があります。なるほど、母子一体願望というより、我が子をまるで他者のように見ているのがおもしろい、良い表現だなと思ったことがあります。

私は親戚に子どもが多いせいなのか、今は自分の子どもを欲しいとは思わないんですよね。私自身、叔母に非常に良くしてもらった経験がありまして。叔母は独身時代から、ずっと仕事をしている姿勢を見せてくれたので、憧れていたんです。後に今で言う晩婚だった彼女の姿をずっと見ていたこともあって、私は早く結婚しなきゃとか、そこまで思ったことはないんですよ。

もしかすると、私も産みたいという気持ちが出てくるのかもしれませんが、育てるとなると経済的な不安もあります。ただ、私やパートナーがたくさん稼いでいてお金に余裕があれば産む気になるのか、というとそれも分からない。年収が一桁違えば、また別の選択肢がたくさん広がりますよね。旅行に行ったり、好きなものをたくさん買ったり。だから、結局は変わらないのかなと。産みたい人は年収に関係なく産みますし。

あの、先ほど「寂しいから」結婚したいという男性たちの動機について話しましたが、結婚はともかく、「寂しいから」で子どもをもうけるのはエゴだと私は思うんですね。自分の孤独を埋めるために子どもを産もうだなんて傲慢です。年をとってから寂しくなるから産んでおいたほうがいい、といった論調を聞くと、特にそう思うんです。

――産みたいか産みたくないかという問題もありますけど、産んだらその後、長い期間をかけて育てないといけないので、気軽に産めとは言えませんよね。そう考えると戦前戦後時中の人達ってよくあんなに産めましたよね。私の祖母は10人兄弟です。

北条 でも、今みたいに一人一人手をかけて育てていませんからね。10人目の子どもは長女が世話をするという感じで。子どもは労働力でしたし、子どもに対する価値観が今とは違うんですよね。

戦後生まれの団塊の世代は、一人のお母さんが4~5人産んでいました。そうなると日本は食糧難が起きるのではないかと想像していたお役人がいて、「少なく産んで大事に育てましょう」という風潮になったのがベビーブームの後です。それが功を奏した結果が現在の少子化となっているのに、今さら一人当たり1.8人以上産みましょうとかいわれても、何十年もかからないと戻らないですよ。

――年金制度などの一度作ってしまった社会保障を維持すべく、子どもが必要されている側面もあります。

北条 年金制度は人々が子どもを二人以上産んでいくことを前提とした制度ですからね。そのほかの社会保障制度についても、せっかくマイナンバーもあるので、世帯単位で見るのではなく個人ベースにするべきだと思っています。マイナンバーは社会保障に使いますというふれこみです。個人ベースとなると、それまで扶養されていた女性のために、男性が10だとすると女性の賃金は7しかないという、現在の女性の低賃金問題についても改善すべきですし、扶養控除もなくすべきだと思うんです。同性婚も世帯として認めるというのは、「偽装家族」が生まれる可能性があるので、政府はしないと思うのですが、戸籍を個人ベースにしちゃえばそういう不正も出にくくなると思います。

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 この取材をするにあたって、最初に『本当は結婚したくないのだ症候群』を読んだとき、自分が婚活の取材を多く受け持った経験や、帰省するたびに親戚から「彼氏を連れて帰ってこなかったの?」とからかわれたりすることなどから、「そろそろ私も結婚をしなければいけないのか???」と悩んだ時期があったことを思い出しました。しかし自問自答の末、「書類上での結婚という形にとらわれなくても、そばに寄り添えるパートナーがいればいい」と考えるに至り、今はザワザワした気持ちは落ち着いています。周りの「ああしろ、こうしろ」に巻かれていくのではなく、きちんと自分の意志と向き合い、優先事項を決めていくこと。結局はそうすることでしか、納得できないのではないでしょうか。

(姫野ケイ)

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姫野ケイ

ライター。1987年生まれの宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。学生時代は出版社でアルバイトをしつつ、ヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。猫とお酒を与えていれば喜ぶ。

@keichinchan