「女性器にピアスをした女は通報しろ」!?
2015年5月、イギリス政府は医療機関に対してこんな通達をしました(※2)。
「女性器にピアスをした患者を見つけたら、FGM被害者として通報するように」
この「FGM」とは、「Female Genital Mutilation(女性器切除)」の略。WHOの定義によればこれは、「女性器に対して医療上の理由ではない加工をくわえたり、怪我を負わせること」と説明されています。
FGMはもともと、アフリカ大陸を中心に行われてきた行為です。女性器の一部を切り取ったり、縫い合わせたり、クリトリスをなくしてしまうことで、女性から性的な快感を奪い、結婚まで処女であることを保証する目的で行われてきました。
FGMを受けた人は、多量の出血や感染症により、一生続く後遺症を負ったり、最悪の場合には命を落としてしまいます。それにもかかわらず、FGMの具体的な内容が本人に説明されていなかったり、もしくは「FGMを行わない女は汚い、結婚できない」と言い聞かされて断れない状況に追い込まれていたりということで、このことは国際的な人権問題として考えられるようになりました。
そんなわけで2003年に、イギリスではFGMを禁止する法律がつくられたのです。ところがこの法律を踏まえて考えると、女性器へのピアスはまさに“医療上の理由ではない加工”なわけですから、違法行為とされてしまいます。
つまり、女性(または女性器の持ち主)の自由と人権を守るための法律が、まさに、女性(または女性器の持ち主)が自分の女性器を好きなように飾る権利を奪ってしまった。そのような皮肉な状況が、現代社会では起こってしまっているわけです。ロンドンで15年以上も女性器にピアスを開け続けてきた専門家、リアーナ・ジョーンズさんは、このことについて現地WEBメディアにこう語っています。
「まったく、本当にバカげています。(中略)だいたいのところ、みんなはあそこを可愛く見せたいだけだし、何かキラキラしたものをつけたいだけなのに」
【参考文献】
※1……Jayme Wrightほか著「Cultural Encyclopedia of the Body」p.231-235 Victoria Pitts-Taylor社刊、2008年
※2……Isha Aran「Did Britain just ban vaginal piercings?」Fusion