今年1月28日のことですが、アメリカの大手玩具会社マテルが、世界的なヒット商品であるバービー人形に、「背が低めで痩せているプチ・バービー」「背が高いトール・バービー」「ぽっちゃりしたカービー・バービー」という新しい3タイプの体型と、髪や肌、目の色や、ヘアースタイルのバリエーションを増やすことを発表しました。
バービー人形は、何かと非難されやすい人形です。「体型が非現実的で、摂食障害の原因を作っている」「ブロンド碧眼が一番美しいという美意識を子供たちに植え付ける」という西洋白人中心主義とそれに基づく美の規範化への批判は幾度となく繰り返されてきました。
古いものだと、ナビスコ社のオレオクッキーとのコラボ商品であった黒人女性を模した「オレオバービー」。体型は白人のバービーと同じで肌の色だけ黒いオレオバービーは、大きなヒップや厚い唇など黒人女性的な美の特徴を備えていないことから、「外は黒いが中身は白いオレオと同じ」「白人文化を内面化した黒人」という黒人差別を象徴している、という理由で批判されました。他にも人気が出ずセールになった有色人種のバービーに対して「人種差別を助長する」という批判があがったことがあります。
バービーの友人として売り出された「ミッジ」人形は、未婚の母として妊娠したものとされ、道徳(保守的な性愛規範)上の理由と、膨らんだお腹をパカッと開けると胎児がむき出しになるというギミックのビジュアル的な問題から発売中止になりました。お腹の大きなティーンエイジャーの「妊娠バービー」を発売した際にも、「ティーンエイジャーの妊娠を助長する」と非難を浴びています。腰に「ハートマークの中にKen」と描かれたタトゥー(浜崎あゆみと長瀬智也がやっていたノリに非常に近い)を入れたバービーも批判されました。
2013年には、ベルリンでオープンした等身大バービー人形の家「ドリームハウス」が、「バービーは性差別のロールモデルである」「美の追求と家事に専念するのが女性の理想という印象を与える、バービーのイメージとは異なる人生もあると女性に伝えるべき」とフェミニズム団体から批判も受けました。私はこの批判は少々的外れであるように思います。バービーの公式の職業は「ファッションモデル」ですが、その他にも多種多様な職業に就いており、その仕事も、「宇宙飛行士」「レースドライバー」「コンピューターエンジニア」「外科医」「建築家」「起業家」「大統領候補者」などなど、女性の参入が比較的少ない業種に積極的に就労しているからです。