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マテル社の「ポリコレバービー」と日本の読者モデル人気に見る、誇大な欲望の嫌悪と禁欲精神の前傾化

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 「自分の容姿とかけ離れた人形を好まない」というのは、ある一面から見れば、「自分の容姿とかけ離れた身体を欲望できない」という、妄想と欲望のリアル指向、多少大げさな言い方をすれば、欲望が誇大になることへの嫌悪と禁欲でもあります。つまり、誇大なナルシズムの投影装置としての人形から、共感と親和性の投影装置としての人形への転換があるのではないかと思うのです。

 ほとんど実現不可能(日々のダイエットとエクササイズに加え、美容整形を繰り返したり、手術で肋骨を何本か抜き去ったりという途方も無いステップによって、極めてバービー的な身体を手に入れた人たちがいることも事実ですが)な、言うなれば崇高ですらある身体を欲望することよりも、程々に現実的な美としての身体への欲望がスタンダードになっているというのは、日本における読者モデルのブームなどとも親和性が高いように思います。

 しかし、共感と親和性の投影装置としての人形の美点を主張する場合に、「体型が非現実的で、摂食障害の原因を作っている」「性差別のロールモデルである」といった、誇大なナルシズムの投影装置としての人形批判がセットになることを鑑みると、やはり現代社会において、欲望が誇大になることへの嫌悪と禁欲の精神が前傾化しているのではないでしょうか。

 次回は、欲望が誇大になることへの嫌悪と禁欲の精神が前傾化するゆえにいっそう際立つ「バービーになりたい」欲望を実現した女性たちについて、考えていきたいと思います。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」