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女の人が怖い 徒歩3時間のラブホテルに連れて行ったら怒られました

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病気で会社を辞めた元彼女のミョンちゃんは今何をしてるかというと、南の国で語学留学中なのです。

もう日本に戻ってこないと言って空港から飛び立って、それで縁が切れたかというとそうでもなく、ちょくちょくメッセージのやりとりやLINEの通話などは続いていました。今日はブラジル人とデートした、明日はシンガポール人とデートだ、といった話に僕は適当に相づちを打ち続けていました。語学学校に集う人たちはさすがに多国籍だなぁ、と思いました。

そんなこんなではや二カ月が経って、ミョンちゃんは手続きやら何やら諸々の用事のため一旦日本に戻ってきました。またすぐに海外に行くらしいのですが。戻ってきた、といっても、日本は彼女の母国じゃないからどういう感覚なのかわからないのですが、僕は「戻ってきた」という表現を使い続けました。彼女の国籍は韓国だから、働いてないとビザの問題とか色々あるらしいのですが、それでも「戻ってきた」と思いました。

「会おうよ」

とミョンちゃんが当たり前のように電話してきました。「奥山くん、東京までおいでよ」と言われて、一体あの別れ話みたいなあれやこれやはなんだったんだ、という気になりました。

僕は無視して電話を切りました。

そして小説を書くことにしました。

今となっては現実逃避でしかない、小説を書くことにしました。

現実というのは全く、嫌になることばっかりです。うんざりすることばっかりです。就職活動もうまくいかない。だから僕は、小説の世界に思いっきり逃げ込むことにしました。

朝も昼も夜もなく僕はただキーボードを叩き続けました。書いても書いても小説の中の無職は働こうとしません。あれやこれやと言い訳ばかりして、毎日を無為に過ごしているようです。書けば書くほど死にたくなったけど、僕は小説を書きました。

僕はもしかしたら、意地になってるんでしょうか。近ごろ、どんどん人の話が素直に聞けなくなって、頭の中が凝り固まっていく感じがしています。

しばらくしてまたミョンちゃんから電話がかかってきました。携帯が何度も震えました。僕は電話に出ました。

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

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