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「現実ってなに? 命って? 魂って?」初音ミクを見て考えたこと

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初音ミク

ファミマでめっちゃ流れてません?(『グレイテスト・アイドル【ジャケットイラスト:貞本義行】通常盤』ソニー・ミュージックダイレクト)

 8月31日は、2007年に誕生した初音ミクさんの、6回目の誕生日。その日、東京MXで放送された「初音ミク『マジカルミライ2013』マルっと紹介90分SP!」を拝見しました。これは、前日30日に横浜アリーナで開催された初音ミクさんのライブ『マジカルミライ2013』を紹介する番組でした。

初めて初音ミクのライブを見て、おったまげた

 初音ミクさんを「降臨」させたライブがある、と聞いたことはあったのですが、恥ずかしながら、その模様を拝見するのは初めてでした。自分の想像を超えるライブの様子をみて、私は、おったまげました。

 まず、規模! どう見てもアリーナクラスの会場が、埋め尽くされている映像を見て凄い……と思いました。急いでネットで調べてそこが横浜アリーナということを知ったのですが、アリーナも、スタンドも、緑色のサイリュームで一杯なのです。失礼ながら、ミクさんのライブは数千人規模のライブハウスなどで行われているのかと勝手に想像していた自分の愚かさに気付きました……。30日のライブは、昼の部(18歳以下優先)に3,900人、夜の部に10,000人のお客さんが参戦したそうです。

 ライブでは、透明ボードにプロジェクタで投影したミクさんが歌って踊り、ボード後方の一段上がった場所で、キーボード・ベース・ギター・ドラムなどからなる、生のバンドが演奏していました。

 ミクさんは、3DCGのアニメーションなのですが、その姿には、生きた人間であるバンドの方よりも、ある種のなんというか、不思議で生き生きとした存在感がありました。

 ミクさんは、人間の動きをそっくりに再現したモーショントレースの、指先からまぶたの開き具合までキメキメな動きで、観客を魅了していました。複雑な振り付けのダンスを踊り、ポーズを決め、繊細な表情にウィンクやバイバイなども織り交ぜ、観客に視線を投げていました。まつげの先まで美しく、ビビッドなインパクトがあるので、もし客席にいてミクさんに視線をもらってしまったら、もう失神寸前になりそうです。

 非常に基本的なことですが、二次元と三次元がここまで融合しているということに、感動し、バンドメンバーだけでは、この空間、および、興行は一切成り立たない、という事実に驚愕しました。ミクさんは(3DCGで作成されているとはいえ)基本的には二次元に存在するバーチャルアイドルだと今まで思い込んでいました。しかし、そのミクさんは、三次元の存在であるバンドメンバーと協同で一つのパフォーマンスを作り上げている……。ライブの模様を拝見するにつれ、ミクさんを二次元の存在と決め付けるのは、少々乱暴なんじゃないかな、と、だんだん自分の考えが変わっていくのを感じました。

 照明の具合によっては、ミクさんの方が実写で、サイリュームを振っている観客のほうがCGに見えてしまう瞬間もあり、私の脳ミソはどんどん混乱していくのでした。

 二次元でも三次元でもないとしたら、ミクさんはなんなんだろう? ミクさんはバーチャルな存在だけど、こうしてステージ上にいきいきと存在しているということは、リアルな存在でもある訳で……? そして、ミクさんは人間ではないにせよ、命のない存在だと断定してもいいのだろうか? 実体はなくとも、ミクさんに魂は宿ってそうだし……。

 現実ってなに? 命ってなに? 魂ってなに? と、二晩くらい、眠れなくなりました。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』