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「子宮の声」に耳を傾ける女性たち。ひとり芝居の擬人化ごっこで得るものとは

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子宮の声、聞きたいですか? Photo by Darla دارلا Hueske from Flickr

 魂の欲求である子宮の声に従って生きることが、幸せのカギ! という〈子宮教〉。先週末の4月9日には、子宮系女子のカリスマである子宮委員長はる氏の著書第2弾が発売され、ますます盛り上がっているご様子です。

 でも私には未だ〈子宮の声〉が1ミリも理解できず、やりたい放題するための言い訳に聞こえてしまい……この視野の狭さ、謎物件ウオッチャー失格!? そこで〈子宮と対話するコツ〉を学べるというDVD『子宮との対話レッスン』(7000円也)を知人からお借りしてみました。

 〈調和整体セラピスト〉を名乗る彩(さい)氏という子宮系女子が過去に開催した、ワークショップが収録されているようです。彩氏は、子宮委員長はるの著書にも登場する〈心と体の調和〉をコンセプトに活動する整体師。〈子宮と体が仲良くなるメルマガ〉を発行し、サロンのHPには〈子宮力アップ整体セッション〉なるメニューも紹介されています。どんな施術であるのか激しく気になるところですが、まずはDVDのレッスンを実践し、セルフでがんばってみることにしましょう。

 DVDを再生すると彩氏の自己紹介と、子宮の声についての説明が始まります。ところでお召しになっているワンピ―ス、どこかで見たことが~、と思ったら「もうすぐ私の子宮から新しい命が誕生する予定です」と来るじゃありませんか。ああそうか、あれだあれだ。楽天1位の、あのマタニティ兼授乳ワンピースですわ。

 じゃなくて、子宮の声って〈マタニティハイ〉の産物なんじゃないのかなんて疑惑が、まずひとつ浮上。「私のおなかから」と言わず「子宮から」と強調するあたりは、子宮系女子のたしなみなのかしら。この人たち、生理痛で「お腹が痛い」と言う時も「今日は子宮の調子がイマイチで~」とか言うのかな。胎内記憶をリスニングするとき、「おかあさんの子宮にいたとき、どんな気持ちだった?」って聞くのかな。「子宮リスペクト!」は理解いたしましたが、会話がちょっと生生しくてギョっとさせられます。

あなたの子宮の色は何色?

 DVD全2時間のうち、1時間20分までは子宮の声を解説する体の、〈自分語り〉。治療を受けて薬を飲まなくては生理が来なかったのに、子宮の声に従って温めケア等を取り入れるようになったら順調になった。子宮の声=魂の欲求に突き動かされて海外へ旅行したら、奇跡の妊娠! パートナーシップもビジネスも思い通りにうまくいくことばかりでびっくり!

 なんでしょう、子宮系女子の体験談って、テンプレでもあるのでしょうか。DVDでは繰り返し「声の聞こえ方は人それぞれ」「正解は、ない」と言いながら、子宮教女子たちの語る物語の、この既視感! 元風俗嬢であったことを語る子宮委員長はる氏ほどハードなストーリーではないにしろ、話の流れがそっくりなんですよね。

 まあそれはそれとして、とにかく本題である子宮の声を聞くレッスンを試してみなくては。レッスンパートが始まると映像が自然風景の写真に切り替わり、ゆったりほんわかしたトーンの語りが流れます。

「子宮をイメージしたら、ゆっくり深呼吸してください。子宮さんに、質問をしていきます。パッと浮かんだ答えをキャッチしていきましょう」

 イマジネーションの世界に入るわけですね。ふむふむ。でもmessyチームとしては、脳内にしQちゃんが躍り出てきてしまうキュウ~。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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