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人間的に問題のある奴なら、いじめてもいいと思いますか?

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僕は学校終わりにゲーセンに入り浸るようになりました。ゲームは下手だったし、格ゲーもすぐに人に負けたけど、なんだかその空間に僕はリア充感を感じて、それで満足していました。

テスト期間中も僕はゲーセンに通い続けたのですが、ゲーセンはがらがらでした。さすがにみんな家で勉強していたわけです。

そのゲーセンに、僕以外にもう一人の人間がいました。クラスメイトの網走くんでした。

網走くんは、背が高くてイケメンでした。そして抜群に頭が切れて、誰からも好かれていたクラスの中心人物でした。そう、まさに彼こそが、僕の理想とするリア充青春生活を謳歌している人間だったわけです。

他に相手がいなかったのか、網走くんは無言で僕に対戦を挑んできました。当時のゲーセンは、巨大なゲームの筐体が向かい合うようにセッティングされていて、対戦中の相手の顔が見えないようになっていました。僕たちは無言で、ゲームの中で殴り合いを続けました。大体僕が負けました。網走くんの方が僕よりゲームがうまかったからです。

僕たちは夜までそこで殴り合いを続けて、無言で別れました。

翌日のテストで、網走くんと僕は100点を取りました。

テストからしばらくして、答案が返却されてきたころ、網走くんが僕を遊びに誘いました。

「クラスの連中は、バカだよ。あの程度のテストで、勉強して100点が取れないんだから。あのとき遊んでたのは多分オレとお前だけだよ。オレたち以外、みんなバカだ」

そんなこんなで、僕と網走くんはよく遊ぶようになりました。でも、次第に網走くんは不良グループとつるむようになっていき、僕は網走くんにいじめられるようになっていきました。

網走くんのいじめは、中々創意工夫に富んでいました。ある日学校に行くと、僕の椅子と机がありませんでした。僕は仕方なく、それを探して校内を歩きました。クラスのみんなは、微妙に机をズラすなどして、僕の机が足りないことがわからないようにしていたようです。先生は気づいていなかったのか、それとも面倒臭くて気づかないフリをしたのか、僕はいないものとして扱われました。つまり、僕が教室にいないことは何故か問題になりませんでした。

机と椅子は中庭の隅の泥の中にありました。中々手の込んだ嫌がらせだと思いました。一人で運んで教室に戻すのは、大変でした。泥だらけになった僕の机と椅子を見て、先生は僕を怒りました。冷静に考えて欲しいのですが、自分から好き好んで自分の机を泥だらけにする奴がいるでしょうか? そのうちわかってきたのですが、どうやら学校のクラス運営にはスケープゴートが必要なようでした。つまり、一人くらい槍玉にあげられる生徒がいた方が、先生としてもうまくクラス運営が出来るということです。どの先生もいつも顔をしかめながら僕を叱りましたが、内心どこかで僕の存在を喜んでいるんじゃないかな、と僕はなんとなく感じていました。

あるときは僕の鞄は女子トイレに投げ入れられていて、仕方なく取りに行くとそれを先生に告げ口されて怒られました。僕は生活指導部の常連で、週一で呼び出されており、とんでもない問題児ということになっていました。他に生徒指導部に呼び出されているのは、正真正銘の不良ばかりだったので、呼び出されている最中も彼らは先生の目を盗んで僕を殴ったり蹴ったりしました。でも、先生もそれに気づいてないわけがなかったと思います。

授業中に、バレーボールが飛んでくるんです。僕の頭にそれが当たって、跳ね返ってボールが宙に舞い、別の誰かがスパイクを決める。先生は笑いました。ウケているようでした。お前ら、ほどほどにしとけよー、と彼は気弱に笑いました。

僕がいじめられているということを、両親も全く知らないわけではありませんでした。時折、それは散発的に問題になりました。さすがに、目につくので、他の先生やクラスの誰かが問題にしようとするのです。もちろん、それが問題になる度に、僕に対するいじめは激しさを増していきました。

その先生が僕の両親に向かって言ったらしいことが面白いんですよね。

「自分も昔、中学のとき酷くいじめられていて、登校拒否になり、自殺を考えたこともある。だから、なんとしてでもいじめをなくしたい」

そう言ってたらしい人が、僕が授業中にいじめられているのを見て、ついには開き直ったように笑い出したんです。狂ってるよなぁ、と僕は思いました。

まぁ、私立にコネで就職するような先生って、極端に無能な人がいるんです。頭も悪くてコミュ力もなくて倫理観もない、みたいな人は多い。多分、通常業務だけで手一杯で、いじめなんか解決してる余裕が彼にはなかったのでしょう。

あるとき、ボクシンググローブを学校に持ってきた奴がいました。

「これでお前を殴ってやろうと思ってさぁ。楽しみで眠れなかったんだよ。お前も楽しみだろ?」

僕は休み時間に教室の後ろに連れて行かれて、羽交締めにされました。それから、ボコボコに殴られました。彼が飽きると、別の奴がグローブを身につけて、殴られることをサンドバッグ状態と言うけれど、これじゃ本当にサンドバッグだなぁ、と思いました。まぁ、グローブで殴られるのって、素手に比べたらそんなに痛くないんです。それが救いと言えば救いでした。それより、僕の背中の上でバク宙するという遊びが流行っていて、あれはわりと命の危険を感じました。

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

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