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オザケン家の育児とは? 妻&母が「粉ミルク=資本主義の陰謀」と語り合う

【この記事のキーワード】

 対談で語られているのは、オザケン妻がはじめての育児を通じて実感した、母乳育児のすばらしさ。自分と赤ちゃん、身ひとつで出かけられるのは、気楽で自然でいい気持ち。粉ミルク育児の友人が語っていたという、災害でミルクが手に入らなくなったらという不安について。授乳はミルクでコントロールするのではなく、いつどれだけ飲むのか赤ちゃんに主導権を持たせて行われるべき。母乳を与えている間の、母と子の一体感。赤ちゃんがおっぱいを飲みながら眠ることの安心感と幸せが、その後の人生も安定させるetc.……

 そこへ粉ミルクが主流だった時代のオザケン母が、「自分は粉ミルク育児で、本当に残念だった」とばかりに相槌を打つのです。そして母乳育児賛礼から、徐々に現代の授乳事情をディスりはじめる両者。

 授乳ケープは、まるで恥ずかしいことをしているかのような気持ちになる。大人だって顔にナプキンかけられてパイを食べたくないでしょう? 授乳用の服なんて特殊な服を着るのは変な話。搾乳して飲ませるのは2倍の仕事をすることになるので、やっている女性は本当にすごい(と褒めながら、不自然よねーと言いたいのが伝わってくる)。

出ました、陰謀論!

 すべてを「自然じゃない!」とぶったぎるふたりの主張は、粉ミルクそのものが悪いわけではなく、そうせざるをえない社会のあり方が問題であるというものですが、結果的に粉ミルク育児を行っている女性が読んだら、嫌な気持ちになることは間違いありません。さらに自然に反した粉ミルク育児推しは、より多くの商品を買わせようとする資本主義の陰謀とばかりにグローバリズムを糾弾します。

 おっぱいの世界は〈権力の思惑と資本の都合を無視した解放区〉。だから支配する側は母乳育児を恐れる。粉ミルクなら、消費社会のマーケットに吸収して親子を支配することができるんですと。なんじゃそりゃ! 母乳は母乳で、ハーブティやらマッサージやらいくらでも商売があり、中国では母乳の出をよくするためのマッサージ技術を持った〈催乳師〉の職業が高収入につながると人気が高まっている今、母乳=ナチュラルだから特別なものは何も必要ないなんて考え方は、ただの理想論です。

 そんなお説とともに引き合いに出されるのは、1977年のネスレボイコット運動※や、1955年の森永ヒ素ミルク事件。

ネスレをはじめとする乳幼児食品販売会社が、発展途上国に進出して粉ミルクによる育児を推進したことで、ミルクを継続的に購入できない貧しい家庭で栄養欠乏が起こったり、不衛生な環境で作られたミルクで感染症の問題が発生したりして、告発が相次いだ。

 粉ミルク推進運動によって同書で指摘されるような問題が過去に起こったのは事実ですが、それに対しては既にWHO(世界保健機構)コードがあり(母乳を推進するガイドライン)、日本も現在はとっくに「可能である限り母乳」という風潮は できあがっています(日本助産師会による母乳神話よりのテイストは気になるものの)。そのうえで粉ミルク育児を行うのは、どうしても母乳が出なかったり足りなかったり、病気や仕事の都合で切り替える必要に迫られるからです。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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