春菜の「○○じゃねぇよ!」芸は、ブスネタ以前に、「女性らしい話し方・(言葉遣い・テンポ)」「女性らしい受け答え」からの逸脱です。
例えば、取引先の接待のような場でセクハラ発言などのハラスメントにあっても、程度にもよるでしょうが「セクハラレッドカード、退場!」という具合に素早く加害者にハラスメント行動に対する責任をとらせることができることは少ないでしょうし、無理矢理レッドカードを切った(ハラスメントを告発するなどした)結果、自らが会社を辞めなければならなくなるような理不尽な事件だって、残念ですがあることでしょう。
春菜のキレツッコミのような、「(好ましいとされる)女性らしさ」から自覚的に逸脱する切り返しは、そうした場において雰囲気を壊さずハラスメントの流れを切る方法として有用ではないかと思うのです。自発的に、(好ましいとされる)女性性から降りることによってセクハラの流れを断ち切り自衛すること。もちろんそれは、ハラスメントを根絶させるような積極的な抵抗ではなく、あくまで消極的な抵抗ですが、差別や権力の構造が一枚岩ではない以上、ないほうがマシではなくないよりマシで、まだまだ必要な抵抗です。
私が自発的なブス(自虐)ネタもポリティカル・コレクトネス的にNGとされることに違和感があるのはこの点においてなのです。もちろん、「ブス/ブサイクなだけでおもろいやん、笑わせろや」という圧力の元ネタを強要されるようなことはあってはなりませんし、他者の属性を笑う人、他者を差別する言葉を投げつける人は軽蔑しますが、春菜の「○○じゃねぇよ!」芸や、ツッコミの速度やキレは女性を勇気づけるものの一つだと思っています。