インタビュー

風俗界の格差が著しい現在、吉原の超人気ソープ嬢はなぜそんなに稼げるのか?

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完璧なボディ!

 待ち合わせは、東京・青山のカフェ。時間ちょうどにメールが届いた。「いま駐車場に停めたところなので、もうしばらくお待ちください」ーーソープランドのメッカ・吉原のなかでも最高級レベルの店に所属する風俗嬢・愛梨さんにとって、その日は休日。愛車に乗って移動し、都内の一等地にあるジムでパーソナルトレーナーの指導のもと身体をメンテナンスし、取材が終われば再び趣味の習いごとに出かけるという。優雅な暮らしぶりの一端がかいま見えた。

 数分後に現れた愛梨さんは、全身から淡い光を放っているようだった。長い髪もツヤツヤなら、肌もツヤツヤ。季節を先取りしたノースリーブのワンピースの胸元からは豊かな胸の谷間がのぞいているが、際立った健康美ゆえ、同性である筆者の目にもまぶしく映る。これぞ高級ソープのトップ嬢と誰もが納得するであろう愛梨さんに、挨拶もそこそこに「いまは月いくら稼いでるんですか?」と質問をぶつけた。不躾にもほどがあるが、彼女は笑顔を絶やさず答えてくれた。

愛梨さん(以下、愛梨)「月によって差はありますが、ベンツのそんなに上のクラスでないモデルなら即金で買えちゃうくらいですね。一般的な20~30代サラリーマンの年収を軽く超える額を1カ月で稼いだ時期もありますよ。当時は海外旅行に行くのが趣味で、年に3回ほど日本を脱出していたので、そのためのお金が必要だったんです。でも、月に25日もお店に出ると心身に無理がきて、次第に仕事に行くのがイヤになってきて、ひどいときは当日欠勤しちゃうんです。だから、いまは週4~5日のペースで出勤しています」

 女性の貧困、若者の貧困、子どもの貧困が問題視されてひさしいが、持たざる者の窮状は一向に解消されることなく、持てる者との差が広がるばかり。その格差は、風俗業界でも歴然としている。身体を売っても稼げない〈最貧困女子〉たちがいる一方で、愛梨さんのように毎月うなるほど稼いでいる女性もいる。両者を分けるものは一体何なのか? 彼女はルックスがいいから、高級店に勤められるスペックに恵まれているから、という単純な話ではなさそうだ。それを知るため、まずは彼女の風俗嬢としてのキャリアをふり返ってもらった。

愛梨「まだ10代のときに地元でフラフラしていたら、ピンサロのお兄さんに声をかけられて体験入店しました。抵抗はまったくなかったですね。幼いころから性にものすごい興味があったし、もともと人と話すのが好きで初対面の人ともすぐに打ち解けられる性格なので、気づけば自然に接客していました(笑)。1日6~7万は稼いでましたよ。高校卒業後に上京して以降、ヘルスやデリヘルも経験しましたが、ソープランドがいちばん長くて、勤めるのはこれで4店舗目になります」

趣味を極めると、仕事もうまくいく

 お店を変わるごとにギャランティをアップさせ、現在のお店でもトップクラスの売上。風俗嬢としてこれ以上ないほどのキャリアを築いている彼女だが、身体を壊して思うように働けなかった時期もあるという。

愛梨「お客さまで心を病んだ方がいて、私に依存してきたんです。そんなにお金があるわけでもないのに、3日に1度は来店されていました。私も影響されてメンタルのバランスを崩し、体調も悪くなって、しまいには入院することに……。そこからは、身体作りに気を配るようになりましたね。この仕事は体力第一。稼ぎたくても、身体がついてこないとどうしようもない。メンタルまで影響されてしまいます。だから食事に気を配り、睡眠をしっかりとって、ジムでパーソナルトレーナーを付けて身体作りをはじめました。私、子どものころは肥満児だったんですよ。マラソン大会もサボるほど運動がニガテな子ども時代がウソじゃないかと思うほど、いまはトレーニングにハマっています」

 現在は、お尻を鍛えるジムと、腕や肩、背中を鍛えるジムに通い、それぞれパーソナルトレーナーを付けている。さらに、「エアリアルティシュー」という、天井から吊るした布を使って行う空中パフォーマンスのレッスンに通っているというから、なんともアクティブだ。全身を使ってパフォーマンスをすることで、プロポーションに磨きがかかった。

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エアリアルティシューを練習中の愛梨さん

 また、趣味と実益を兼ねて撮りつづけているセルフ写真は、某有名美術誌で特集が組まれる(今夏予定)ほどの腕前。好きなことに夢中になって取り組んでいると自然と仕事もうまくいく、愛梨さんはいつしかそんな好循環のなかにいた。

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』『私、いつまで産めますか?~卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存~』(WAVE出版)などの編集協力を担当。著書に『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

twitter:@MiuraYue