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日本画美人に扮したラブドールが、妖艶だけどエロくはないのは何故なのか

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ヴァニラ画廊で開催中

 現在、東京・銀座のヴァニラ画廊で開催中の「人造乙女美術館」。オリエント工業のラブドールの系譜をたどり、人形の新たな可能性を引き出す展示で、今回で5回目を数えるそうですが、私は今回初めて足を運ぶことができました。オリエント工業のラブドールは、古い語でいうと「ダッチワイフ」に相当しますが、トップ画像を見ていただければおわかりになるとおり、あまりの美しさにアダルト業界以外からもアツい視線が注がれています。

 画廊のオープン時間早々か、会場内はすでに人でごった返していて、その半分以上は女性でした。この雰囲気、春画展の会場と似ている! 理想的な女性美を追求したドールだけに、女性の関心が高いのも当然でしょう。私個人はドールの顔を見るとはっきりとした性的興奮を覚えます。私はヘテロですが、これだけエロスを全身で表現しているドールを前にするとどうにもムラムラするのです。

 今年の展示は「オリエント工業日本美術」。日本画に描かれた美女をそのまま同社のドールで再現、という試みがなされていました。人気沸騰中の池永康晟氏による作品「如雨露」をはじめ、絵からそのまま抜け出てきたかのような日本美人たち。それぞれ「桜樹志乃モデル(写真左)」「沙織 うれい顔モデル(同左)」といった人気のドールを起用しているのですが、作品世界に合わせたヘアメイクが施されているため、↓とは別人のよう。「沙織 うれい顔モデル」はこうして見るとロリっぽさが際立っているのに、同展では、切れ長の三白眼でキッと空を見つめていて、その情念あふれる表情に肌が泡立つのを感じました。

 同社のドールは基本的には男性のために作られていますが、その顔に眉を描いたりまつげをつけたりメイクを施すのは女性の仕事です。現実の女性のメイクを踏襲してリアリティを出しながら、なおかつ男性の性的琴線をくすぐる顔にするというのは、なかなかむずかしい仕事だと想像されますが、そこは職人ワザ。その腕が今回の日本画コラボでもいかんなく発揮されているのです。

エロいドールと、エロくないドール

 しかし……エロくない。日本画美人になった女性たちはそれぞれに妖しく、艶っぽいのです。日常のふとした仕草から色気がこぼれ落ちていて、ふくよかな香りまで漂ってきそうです。一体は、着物の前がはだけて豊かなバストが見えてもいました。でも、エロくはないんです。ここでいう「エロい」は、男性でいえば勃起する感じ。女性でも、心のなかのチンコが反応する感じって経験したことありませんか? ラブドール本来の役割はこの性的衝動をONにすることにあるはずですが、日本画美人になったドールはその役割を取り外されています。そんな単純に勃起しては、彼女たちに失礼なような気すらしてくるのです。

 一方、ギャラリーの壁には同社のラブドールを撮り下ろした写真作品が展示されていました。ランジェリーや、男性好みの清楚系ワンピースをまとい、「本来の姿」で底にいる彼女たちを見ると、「やっぱりエロいな~」と欲情します。

 最初は、本来の彼女たちが空っぽだからだ、と考えました。どこを見ているかわからない瞳、半開きの唇、男の欲望を受け入れるために作られ、だからこそ空っぽでなければいけない。そうでないと男性は妄想を膨らませられないし、勃起もできないのだ、と。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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