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「産まない人生」を選ぶ女は、そんなにも罪深いですか?

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酒井順子『子の無い人生』(KADOKAWA)

酒井順子『子の無い人生』(KADOKAWA)

『【ご報告】』

(……来た!)

SNSでまるでテンプレでもあるかのように使われるこの言葉。次に続く言葉は何だろう、と心なしか心拍数が上がる。

「【ご報告】テンプレ」でアナウンスされるのは大抵次のうちのどれかだ。

結婚、就職、転職、異動、海外赴任、留学、そして出産。

結婚だとこっちのテンションもあがる。「わー、おめでとう! お幸せにね!」なんてコメントもつけちゃう。

仕事に関する報告や留学のお知らせも、友人の活躍が嬉しい。「いいね!」 を惜しまない。「いいね!」だけでなくコメントもつけちゃうのが、出産だ。無事に出産を終えた友人と生まれた赤ちゃんの写真はなんだか神々しくて、二人とも元気で何より、と胸を撫で下ろす。間違いなく、嬉しい。その感情に嘘はないけれど、心いっぱいに広がる嬉しさの端っこに不安と寂しさが小さいシミを作る。

出産適齢期の女は「産まない人生」について何を思うか

年齢、31歳。性別、女。結婚5年目のDINKs。

第一子の妊娠・出産には遅いこともないが早いこともない。むしろ「欲しいなら早めがいいよ!」と言われる年齢。私には命には関わらないが、10年以上定期的に通院し服薬が必要な持病がある。妊娠中は(一部例外をのぞいて)服薬出来ないため、妊娠・出産へのハードルは高い。

夫とは、子を持つかについて結婚前に話し合った。結論は「体調のことも、子供をつくるかも、成り行きを見守っていこう。子供はどっちでもいい」。現時点で、生活に特に不満はない。欠けも感じない。十分楽しい。ただ、やはり周りの出産報告を聞くと、心に不安と寂しさのシミができるのだ。

シミをつくる不安と寂しさの正体は、「置いてかないで」だ。もっといえば、「あ、また子供のいない仲間が減ったのか……」。5年後、友達と集まったとき子供の話題に入れないんじゃ? てかそもそも呼ばれないんじゃ? という今考えてもどうしようもない不安。世間で肩身が狭くなるのでは、という不安。やっぱり老後寂しいのでは、という不安。死ぬときに後悔するのだろうか、という不安。

そして年長者は言う。「子はかすがいよ」と。いまは良くても何十年と続く夫婦生活、子供がいないと絆はやはり弱いのだろうか? ここでもまた不安になる。

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