「クロワッサンの食べ方で男が自分をどんなふうに愛するかわかる」という独自の恋愛論を持つゆり子。彼女自身はクロワッサンをくるくると剥いで食べるタイプで、これまで自分と同じ食べ方をする人を見たことがなかったのだが、なんと小津が自分と同じようにくるくるとクロワッサンを剥いで食べることを知ってしまう。そこにたまらないエロさを感じたゆり子は、不倫をしないという自分のルールを破り、あっけなく一夜を共にしてしまうという設定である。
このシーンでクロワッサンを持つ小津、いや新井の長い指はたしかにエロかった。いわゆるイケメン的な顔立ちではなく、どちらかといえば地味で素っ気ないルックスの新井だが、その手と指をクローズアップするとハッと息を呑むほど美しい。筆者はそのシーン中に画面にむかって「綺麗な指してたんだね」と往年のヒット曲を思わず口ずさんでしまったほどである。こりゃあ毒島ゆり子でなくても興奮するわ。
加えてこのクロワッサンシーンの後にくる濡れ場がすさまじかった。ベッドに腰掛け、やや脚を開いたゆり子。その脚から、黒いパンティを脱がせる小津の美しい手。続くゆり子と小津のキスシーン。後ろからゆり子の前髪をかきあげながら自分の方を向かせる小津の指もこれまた、たまらなくエロい……。この濡れ場は、「なんかこのふたり、めちゃ息があってない??」と妄想させるに充分なシーンだった。前田敦子はこんなに自然な絡みを演じられる女優だったのか、それとも新井のリードが巧みなのか。
181センチの長身でダークカラーのスーツを着こなし、大人の男の色気とフェロモンがしたたり落ちるような小津を演じる新井は、最近のインタビューで「(前田とは)仲良くさせてもらっていて、あっちゃんの映画はたくさん見ている」「あっちゃんに関しては女優としてすごくカッコいい」と前田をベタ褒めしている。さらに前田とのラブシーンについて問われると、撮影時を思いだしたのか照れ笑いし「(素が)出ちゃう。キスの仕方は(素が)出ているかも……」と。これはあくまでも演技ですよ、つくりものですよ、というテイでドラマや映画作品を観る側は身構えるが、わざわざ「素のキスです」と公言されると視聴者として混乱するものである。う~ん、そうか、あのキスはそうなのか、新井さん。