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無職アラサー男性の人生相談・最終回 これからどうすればいいんだろう

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振り返ると、視界には猥雑な町のコンクリートが広がっていた。欲望と惰性と打算が、強制と冷笑と矛盾が、混ぜすぎて真っ黒になった絵の具みたいに、色鮮やかな闇になってそこにあった。そこにはもちろん、僕の労働も含まれていた。そう決めたからには、働かなくちゃいけない。これから、もっとうまくいかないことが、きっとたくさんあるだろう。そしてどちらにしろ、僕はその全てをいつか必ず失う。

・夢は夢で寝てみるもの。なりたい職業ややりたい事は目標。夢という言葉は使わない。

というメッセージをくれた人がいたけど、でも、目標だけじゃなく、そもそも人生なんてどうせ、一瞬の夢だ。

僕たちの一瞬の夢。いつか消える日常。愛すべき唾棄すべき日々。

・「いつかは死んでしまう」事のせいにして今やらなければならない現実から逃げてるのかな。ずっと何かのせいにして何もやらずに生きていくの?

それでも、何もやらないまま死んでいきたくなかった。無意味に、無価値に、惨めに、死にたくなかった。

震えるほどの、生きる理由が欲しい。

十代の頃に信じてた、一番大切な気持ちと決別してでも。

生きてる理由がわからないまま、僕は死んで消えていきたくない。

「ねぇ、聞こえてる?」と言うミョンちゃんの不安そうな声が聞こえた。

「うん」

そして僕はタバコを吸って、ビールを飲み干し、立ち上がった。

生きよう、と思った。そう、口に出して、小さく呟いた。

信じるに足る自分になろう。

悩んで、既存の価値を疑い、葛藤する。もがく姿を、免罪符にする。それが許され得る時間は、終わり。もうすぐ30。「DON’T TRUST OVER THIRTY」なんて、言ってられない。これから僕は、疑う存在じゃなくて、疑われる存在になる。

僕は君たちを殺した世界の一部になる。

30を越えたら、空っぽじゃ、生きられないのだ。価値を生み出して。若者に疑われる世界の、疑われる大人の一部にならなくちゃいけない。自分は被害者なんだって顔で、居酒屋で政治にクダ巻く? いつまでも、子供みたいに? そうじゃないだろ?

もう、被害者じゃない。これから僕は、加害者になるんだ。

頭が、おかしくなりそうだった。自分が自分じゃないみたいだった。違和感があった。おろしたての革靴、なんとなく軽くしてみたタバコ、プールに身を投げ出したときのひやりとした水の感じ、白い紙の匂い、明け方に吸う澄んだ空気のように、全てが気持ち悪かった。

繁華街、目の前でたくさんの人間たちが、雑に足を踏み鳴らしながら、行き交っていた。むっとした熱気が、見えるようだった。早速、うんざりする。もうすぐ、夏が来る。すーっと息を吸って、吐く。

そして僕は、その中に飛び込んだ。

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奥山村人

1987年生まれ。京都在住。口癖は「死にたい」で、よく人から言われる言葉は「いつ死ぬの?」。

@dame_murahito

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