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“王子様”というシステムの破壊と、抑圧された女性が解放され自立を目指すこと【少女革命ウテナ考察前編】

【この記事のキーワード】

姫宮アンシーという少女

 さて、上記のTV版からの大きな変更点は、劇場版『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』を、より楽しく読解するためのヒントでもあります。

 テレビアニメ『少女革命ウテナ』のテーマを簡単に表すと、「“王子様”というシステムの破壊」と、「献身的な友情と希望によって、抑圧された女性が解放され自立を目指すこと」です。

 TV版の物語をざっと説明していきます。

 私立鳳学園に通う主人公の天上ウテナは、男装した女子中学生です。彼女が男装する理由は、かつて助けられた王子様に憧れ、「誇り高く生きる」ことを信念に王子様になることを目指しているため。彼女はふとしたきっかけから、鳳学園生徒会を中心とした、選ばれたものだけによって秘密裏に行われるデュエル(決闘)に参加することとなります。デュエルの賞品として勝者の所有物とされている薔薇の花嫁・姫宮アンシーの存在を知り、女性をモノとしてやり取りすることや、モノとしてひどい扱いを受けても従順に従っているだけのアンシーに対して嫌悪や疑問を抱きつつも、自身がデュエルに勝利することによって、アンシーを現在の環境から救うため、ウテナは尽力します。

 デュエルの勝者となり、アンシーと友情を育もうとするウテナですが、アンシーは常に従順で自己の意思などまるでないような態度をとり続けます。誹謗中傷はもちろん、殴られたり大勢の前で衣類を破られたりといった陰湿ないじめを受けてもほとんど抵抗しませんし、その場では怯え傷ついたそぶりを見せても、次の瞬間には、まるでなにごともなかったかのように振る舞います。

 アンシーは、誹謗中傷や殴る蹴るなどの暴力に対して感情を表さないだけでなく、他者の好意や思いやりといった行動に対してもまるで感情を表しません。ウテナがどれだけアンシーのために行動しても、ウテナがデュエルに負ければ「ごきげんよう」と、無感情な笑顔でウテナの元を去ります。

 アンシーは、誰かにひどい扱いを受けても従順に従う反面、もの凄く現実的で狡猾ですらある、他者の感情などまるで考えない少女であり、ウテナ(や視聴者)にとって、どれだけ対話しようとしても対話そのものができない、対話をしたと思っても次の瞬間には対話などはじめからなかったような振る舞いをする、圧倒的な「他者」として描かれているのです。

 しかし物語が進むと、圧倒的な「他者」である薔薇の花嫁・姫宮アンシーの過去が浮かび上がります。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」