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「もう社会は変わった。これからは堂々と幸せに生きていきたい」
2013年9月13日。韓国社会で初となるゲイカップルの結婚式が行なわれた。このたび結ばれたのは、映画監督キムジョ・ガンス氏(48)と、クィア映画の制作、配給、輸入専門会社レインボーファクトリーの代表キム・スンファン氏(29)だ。※参考記事
ふたりの顔には、積年の想いを果たしたという達成感からか、自然と笑顔がこぼれおちていた。ソウルの都心で行われた結婚式には、約1000人の参列者が駆けつけ、ふたりの結婚を祝福する様子が報じられた。ゲイカップル誕生のニュースを聞いた韓国ネットユーザーからは、「幸せに暮らせるように祈ります」「性的嗜好はともかく、彼らの勇気に拍手を送りたい」など、応援のメッセージが送られている。
ただ、韓国社会全体の世論を見たとき、ふたりの同性結婚については反発が多い。保守系キリスト教団体から抗議の声が上がっているのは、その一例だ。韓国は人口の約20%がカトリック信者で、世界有数のキリスト教大国。アメリカなどと同様に、教義上、同性愛者を容認できないという世論が根強く残っているため、ふたりの「婚姻」が正式に受理されるかどうか注目の的になっている。
さて、韓国社会でゲイの問題が取り沙汰されるとき、必ずと言ってよいほど議論される話題がある。それは、徴兵制および軍隊内における同性愛者たちの存在だ。韓国には成人男性に徴兵制の義務があることはよく知られているが、そこで問題。そもそも同性愛者は、軍隊に入隊できるのだろうか?
「証拠として性行為を撮ってこい」
韓国にはゲイの入隊禁止という決まりはない。ゲイであろうがなんだろうが、兵役の義務は果たさなければならない。というよりも、そもそも韓国の軍隊ではゲイという存在自体を認めていないのが実情だ。
軍刑法92条には同性愛を禁止する法律がある。ボーイズラブのことを隠語で“鶏姦(ケガン=同性愛者の性行為)”と呼び、これを行ったものは、なんと懲役2年以下の罰則が与えられることになっている。“鶏姦”というネーミングセンスからして前時代的で差別的だが、愛に基づいたボーイズラブだとしても罪として裁かれるので、同性愛者にとっては非常につらい法律である。
ただ、この法律の背景には複雑な軍隊生活の実情もある。たとえば、男性上官とのふたりきりの軍務中に、「パンツを脱いでみろ」と言われた経験を持つノンケの男性がいる。軍隊は徹底的な縦社会なので、上官の同性愛的嗜好が容易にパワハラとセクハラ両方に転じる可能性があるのだ。現在、この法律は同性愛者差別法として議論の的になっているが、廃止に関しては賛否両論がある。もし、自分が兵役に就くとしたら……。どちらが良いのか非常に迷うところではある。
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