インタビュー

殴れないプリキュア、女のケア役割。/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里【2】

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女悪役の定番「失恋闇落ち」

堀越 対談の前にいただいたメールで、柴田さんはプリキュアの母性とか少女性推しについて批判的でいらっしゃると伺ったのですが。

下戸山 プリキュアが母性で、敵を「倒す」っていうより「救う」みたいな方向になってることについて。

柴田 はい。そのことについては、私はすごく批判的で。初期のプリキュアは、女の子だけど殴ったっていい、蹴ったっていい、っていう。純粋な暴力衝動や権力欲が見えたというか。

下戸山 あの、プリキュアオールスターズの映画って毎春新作が公開されるじゃないですか。あれってすごいバトルシーン凝ってて、きっと制作してる人たちも楽しんで描いてると思うんですけど、空中戦でボコボコ殴りあっているようなカッコいい戦闘シーンが2~3回は挟まれるんですよ。とっても興奮します、私。そういうシーン、映画ではまだありますけど……。

堀越 保護者抗議によって、殴る蹴るの表現がダメになったと聞きましたが。

柴田 抗議によって駄目になったのは、まず「プリキュアの闇堕ち」ですね。2作目の長編映画で、キュアホワイトが敵に洗脳されて、キュアブラックと戦うシーンがあって。見ていた女児たちが、「仲良しだった2人で喧嘩するなんてやめて」と、すごく泣いちゃった。で、ファンを泣かせちゃいかんよなということで、そういう展開はもうやらないことになったそうです。

そこもちょっと疑問で、男児向けだったら別に、それは許されるんじゃないですか? 戦隊モノや仮面ライダーで、そういう展開があっても、それによって男児たちが落ち込んだりしても、果たして抗議につながるだろうかと。

もっと言えば、プリキュアが暴力的なのとか、敵に洗脳されて仲間同士で同士討ちするとかって、女の子が乗り越えなければならない問題だと思うんですよ。

下戸山 女の子だって喧嘩しますからね、当たり前に。乗り越えるところだよね。つまり、洗脳されたとかじゃなくっても、敵対関係に陥る、喧嘩したりとか、あるいは、派閥的なものに引き裂かれたりとか、あると思うんですよ、女子同士の関係性の中で。クラスの中ででも。別に全然乗り越えられる、実際にあり得る話ですよ。いつも仲良く誤解も喧嘩もせず末永く親友、なんてあり得ない。どこかのタイミングで喧嘩や別れはある。それを描いたっていいのではないか。

柴田 そう、実際にある。なんだけれども、それは、PTA的な、一般的な親の教育方針で、女の子は優しくとか、女の子だから喧嘩しちゃ駄目とかそういうクレームがあるんですって。

堀越 プリキュアを見てる年齢層が、あまりにも低いからではないですか? 3歳から7歳くらいの子供には、理解出来ないのかもしれないです。悪者はもう、100%悪者なんですよ、子供にとって。だから、それが友だちと両立しうる、っていうのがわかんないんじゃないかな、と。小さい女の子ってもう本当にベタベタなんです。女の子同士で、●●ちゃん大好き愛してる、みたいな(笑)。私たち女の子みんな良い子、かわいい子、みたいな。そういう認識があるから、女の子同士戦う、っていうのがわからないのかもしれない。

柴田 だとしたら、せめて、私は、魅力的な女悪役が必要だと思うんですよね。

堀越 というと?

柴田 女児が年齢的に乗り越えられないのだとしても、「みんな良い子」なんて描き方は同調圧力を強めるだけです。別のタイプの女性を描くべきだと思うんです。

下戸山 一昨年の『ハピネスチャージプリキュア!』の敵だったクイーンミラージュって、洗脳されて悪に染まった敵でしたけど、どうでした? 魅力的なキャラクターになって……た? どう思います?

柴田 いや~あれ、魅力的ではないですよ。『ハピネスチャージ』の最大の失敗要因は、すごい恋愛に寄りすぎちゃったところですよね。

下戸山 神がキモくてね。

柴田 神がキモい。

堀越 神がキモいんですか?

柴田 地球の神様が、神社の巫女といい仲になるんですけど「僕は神だから恋愛出来ない」って理由で巫女をフッたことで、巫女が悪の女王化しちゃって。しかも神のやつ、巫女に気を持たせるんですよね。こんな迫られ方したら、年若いヘテロの女の子(巫女)はそりゃ期待するだろう、という態度だもの。

堀越 酷いな、神(笑)。

下戸山 そもそも神なら、そんな人間の姿形で人間界に降りてくるのやめてほしいですね。姿変えられるでしょ、神なんだから。

柴田 森羅万象とかであって欲しい。

堀越 (笑)。八百万の神的な。わざわざイケメンで出てきて、そりゃないだろ、っていう。

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