インタビュー

多様化していくバービーと、ピンクによる武装/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里【3】

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柴田 それはそうなんだけれども、私はエルサが「より良いマイノリティ」だから、魔法の力という異能を持っていても社会に受け入れられただけじゃないか、と読めて。そこが、私がアナ雪をはじめとする近年のPC映画を手放しで称賛できない大きな理由なんです。

堀越 模範的なマイノリティであればマジョリティの中にいてもいいぜ、ということですか。うーん、そういう読み方も確かに出来なくはないですね。

柴田 エルサは様々なマイノリティをイメージさせる属性を持つキャラですが、たとえばエルサがレズビアンだと仮定したとき、「良きレズビアンだったら認めてやる。女性とパートナーシップを築けるような、より良いレズビアンだったら認めるけれど、淫らなレズビアンはダメだ」というような、そういう“正しさ”が空気として蔓延していないか? と。しかし、「マイノリティ=良い人」なんて公式は成立しないじゃないですか、当然。だって「マジョリティ=良い人」でもないんですから。マイノリティを差別しないことと、「マイノリティはみんな良い人だから権利を認めよう」と働きかけることとは、全然違いますよね。なのに今は後者の空気感が強いんじゃないかと私は感じていて。

堀越 エルサが何を象徴してると捉えるかでまた違ってくる問題なのかな、と思いますけれど。個人的には「エルサはレズビアン」って説は全然知りませんでした、そういう見方があるんですね。

柴田 最近アメリカで「エルサに女性の恋人を」という運動が流行ったんです。

堀越 全然、あの映画をそんな風に見てなかったんで。でも言われてみればそう読めることに驚きました。

柴田 多分、元々はファンのリクエストのひとつであっただけだと思うのですが、そこに多くの注目が集まるのは、アメリカだと日本よりもカップル規範が強いことが関係するんじゃないでしょうか。プロムとかがあって、男と女がセット、みたいな感覚。で、異性愛に限定するのはおかしいという流れがあって、しかしカップル規範自体は壊れずに「男同士、女同士のカップルいいじゃないか!」と。「エルサのような優しいレズビアンが一人なんてかわいそうだから女の恋人をあげて」って……。変ですよね?

下戸山 じゃあ、「誰ともパートナーになりたくないよ」っていう人は社会的に無視されるんですか? いるはずですよね、そういう人も。

柴田 無視されがちなんじゃないか、と。LGBTにも入っていないし。

堀越 日本も結婚規範が根強くて大変ですけど、カップル規範が強い国も大変そうですね。

つづく

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<一覧>

【1】「お母さん」よりも楽しそうな仕事に就きたかった/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里
【2】殴れないプリキュア、女のケア役割。/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里
【3】多様化していくバービーと、ピンクによる武装/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里
【4】ダサピンクマーケットの根底にあるのは<良い女><悪い女>の分断ではないか/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里
【5】王子様なんて要らない、ピンクの抑圧を受けない女の子たち。/『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美×柴田英里

<同書の書評はこちら>
ピンク解放運動を追う 「女らしさ」に閉じ込められたピンクの歴史

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